ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから、すでに3カ月がたとうとする中、その影響は次第に世界各地に拡大しつつある。そんな事態を憂慮し、グレース宣教会(大阪府八尾市、藤崎秀雄代表牧師)は18日、「ウクライナ支援チャリティーコンサート」を開催した。平日夜のイベントにもかかわらず、100人近くが参加。グレース宣教会音楽教師のドリーン・アイビー氏が、さまざまな楽曲をピアノ演奏し、ハンガーゼロ(日本国際飢餓対策機構)のスタッフとして、ポーランドのウクライナ国境付近で難民支援を行ってきたシン・オクチョル氏が現地の様子を報告した。
当初は、ゴスペルシンガーのバネッサ・マドックスさんが米国から来日し、メインゲストとして出演する予定だった。しかし、来日3日前に新型コロナウイルスに感染。アイビー氏が急きょ、メインゲストを担うことになった。
感染症対策のため、事前に入場整理券を配布する形式にしており、出演者変更によるキャンセルが懸念されたが、それもほとんどなく、当日はほぼ計画通りの100人近い参加者が与えられた。教会員の中には、オンラインで視聴した人も多くいたという。
コンサートの冒頭には、市内でウクライナ人道危機救援金の受け付けを行っている八尾市の大松桂右(だいまつ・けいすけ)市長があいさつ。続いて、来日がかなわなかったマドックスさんからのビデオレターが流された。アイビー氏は、メドレー曲からジャズ調のアレンジ曲、聖歌まで、さまざまな楽曲を繰り出して聴衆を魅了。その中でも、「ウクライナのために」として奏でられた一曲(以下の動画)は白眉だった。
まさに、この日、この時にこそ演奏されるべき曲だった。感動のうちにあっという間に30分近くが過ぎ、会場にあふれる拍手と共に音楽パートは幕を閉じた。
その後、シン氏が30枚以上のスライドを用いて、現地の様子やハンガーゼロの活動を報告した。時に力を込め、平和を願う熱い思いを語尾ににじませながら、まるで礼拝のメッセージを語るような熱さで、約30分にわたり語ってくれたシン氏の報告は、とても印象深いものだった。
特に心に残ったのは、「このまま戦争状態が続くと、世界はどうなるか」という話。シン氏はこう語った。
「ご存じのように、ウクライナとロシアは世界の小麦の3分の1を賄っています。これが戦争によって輸出できなくなると、困るのはアフリカの貧しい国々です。小麦が手に入らない。すると内戦や内乱が起こる可能性があります。世界が混乱に陥るのです」
世界は一つであり、ウクライナでの戦争は決して対岸の火事ではないことを示す内容だった。また、現地は新型コロナウイルスによる混乱に加え、さらに戦争という惨事に見舞われる二重の苦しみにあり、保健衛生面、また特に子どもたちは精神面においても、多くの支援を必要としていることを知ることができた。
参加者の声を幾つか紹介したい。
「ウクライナ情勢はテレビでしか知ることができませんでしたが、実際に現地に行かれた人の話を聞いて、本当に深刻なのだと感じました。これからも支援を続けていきたいです」
「素晴らしい音楽と現実的なレポート。そのどちらにも感動しました。私たちは手をこまねいていてはいけないと思わされました」
「自分には関係ないと、どこかで思っていた気がします。反省しています」
いまだに終息の兆しすら見えない中、私たちはできる限りの支援を、見える形で行いたいものである。人々の善意が形を伴い、今必要としているところに届けられるように、そして一日も早く「平和」が実現するように、私たちもできることをしていきたい。そう思わされたコンサートであった。
グレース宣教会は7月末には、ユースメンバーが中心となって企画するウクライナ支援イベントを計画している。またハンガーゼロは、ウクライナ支援のための緊急募金を行っている。詳しくは、ホームページを見ていただきたい。
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