ウクライナ東部ドネツク州スビャトヒルスクにあるウクライナ正教会(UOC)の「生神女就寝スビャトヒルスク大修道院」で4日、敷地内の歴史的な木造聖堂が攻撃に遭い、全焼した。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は同日、フェイスブック(ウクライナ語)などに、炎上する聖堂の動画を投稿。ロシア軍の砲撃によるものだとし、子ども60人を含む民間人約300人が大修道院内に避難していることを知りながら、攻撃を行っていると非難した。
全焼したのは「諸聖徒僧院」と呼ばれる木造の聖堂。ゼレンスキー氏の投稿によると、1912年に成聖され、ソ連時代に破壊されたが、その後再建されたという。ゼレンスキー氏は「第2次世界大戦以来、欧州でこれほど多くの文化的・社会的遺産を破壊した国はロシア以外にない」とし、国連教育科学文化機関(ユネスコ)に対し、ロシアの除名を要請したことを明らかにした。
スビャトヒルスク大修道院は、創建以来500年以上の歴史があり、ウクライナ国内に3つある大修道院(ラビラ)のうちの1つ。
UOCのウェブサイト(ウクライナ語)によると、5月30日にも砲撃があり、大修道院内にいた修道士2人と修道女1人の計3人が死亡、修道士3人が負傷した。6月3日には死亡した3人の葬儀が行われたが、この日には負傷していた修道士3人も病院で死亡。他に修道士1人と修道女1人が重傷だという。
ドネツク州のパブロ・キリレンコ知事は5日、破壊された州内の複数の教会の写真をテレグラム(ウクライナ語)に投稿。州内ではこれまでに43の宗教施設が被害に遭っており、その多くはUOCに関係する施設だとしている。
UOCは、ウクライナに2つある正教会のうち、ロシア正教会との関係を維持してきたモスクワ総主教庁系。しかし、5月27日にはシノド(教会会議)を開催し、現在の戦争に対するモスクワ総主教キリルの立場には同意できないとし、「完全な独立と自治」を表明した。
一方、ロシア国営のイタルタス通信(英語)によると、ロシア国防省は4日、ウクライナの民族主義者がスビャトヒルスク大修道院から撤退する際、諸聖徒僧院に火を付けたとするコメントを発表した。