イランのテヘラン革命裁判所は、アルメニア系イラン人のクリスチャン男性に対し、「家の教会」を運営していたことを理由に、禁錮10年の判決を言い渡した。裁判所は男性が、「神聖な宗教であるイスラム教に反し、妨害する」行為を行ったとしている。
イランの人権活動家通信(HRANA、英語)や英団体「アーティクル18」(英語)によると、テヘラン革命裁判所第26支部は4月11日、「家の教会」の設立者・運営者であるアヌーシャバン・アベディアンさん(60)に対し、禁錮10年を宣告した。また、アベディアンさんの教会のメンバーで、イスラム教からキリスト教に改宗したアバス・スーリさん(45)とマリアム・モハマディさん(46)に対しても、5億リヤル(約150万円)の罰金と10年間の社会・政治団体への加入禁止、さらに2年間のテヘラン圏外追放などを命じた。
スーリさんとモハマディさんはこの他、イラン情報省の事務所への定期的な出頭も命じられた。3人はまた、10年間の「社会的権利の剥奪」も言い渡され、この間は就労の種類が制限されるなどする。
裁判所は3人が、「国家の安全保障に反する行為を意図して、福音主義的な『シオニスト』の家の教会を組織・運営」し、「衛星テレビ受信用アンテナや受信機を維持していた」と指摘。「神聖な宗教であるイスラム教に反し、妨害する教育・宣伝活動を通じて、国の治安を乱す目的で違法なグループを設立・指導し、偽りの主張を流布し、(中略)また他国との接触、あるいは国外からの組織的指導を行った」とした。
3人は2020年8月、テヘラン北東部ナルマク地区にあるアベディアンさんの自宅で集会を行っていたところ、情報省の職員ら約30人による手入れに遭い、逮捕された。情報省の職員らは、聖書とパスワード付きの通信機器をすべて没収した。
3人は、多くの政治犯が収容されていることで知られるテヘランのエビーン刑務所で、保釈されるまでの期間、何度も激しい尋問を受け、精神的な拷問を受けた。3人の弁護士は、勾留中は「彼らの人格に対する無礼な発言、彼らの信仰に対する侮辱」で満ちていたと語った。
判決を下したテヘラン革命裁判所第26支部のイマン・アフシャリ判事は近年、キリスト教徒に対して厳しい判決を下していることで知られているという。3人はその後、控訴した。
イランは、迫害監視団体「オープンドアーズ」がまとめた「ワールド・ウォッチ・リスト」(2022年版、英語)で、キリスト教に対する迫害が世界で9番目に激しい国とされている。