イランでこの春、法改正が行われ、「逸脱した教育やプロパガンダ」が犯罪と見なされるようになった。国際人権団体によると、この法改正はすでにキリスト教徒に対する迫害にも利用されているという。
英人権団体「アーティクル19」(英語)によると、イランでは2月、刑法第499条と第500条にそれぞれ第2項を追加する法改正が、現職のハッサン・ロウハニ大統領の署名の下、成立した。このうち第500条第2項は信教の自由を全面的に攻撃するものだとされ、「セクト的活動」を処罰し、「神聖なるイスラム教のシャリア(宗教法)に反したり、妨害したりする逸脱した教育やプロパガンダは厳しく罰せられる」としている。
国際人権団体「世界キリスト教連帯」(CSW、英語)によると、この新条項はイランの国教である十二イマーム派(イスラム教シーア派の一派)から逸脱した「異端」を標的とするために当局が使用しているという。同条項に違反した場合は、2年から5年の禁錮刑、または15年以下の投票禁止、および高額の罰金が科せられる。
イラン当局は従来、国家安全保障に関わる法律を用いてキリスト教徒を逮捕・拘禁してきた。しかしCSW(英語)によると、キリスト教徒3人が6月末、この第500条第2項により禁錮5年、罰金4億リヤル(約100万円)を言い渡された。
有罪とされたのは、イラン北部カラジ出身のアミン・クハキさん、ミラッド・ゴウダルジさん、アリレザ・ノウルモハマディさんの3人で、いずれもイスラム教から改宗したキリスト教徒だった。3人は「セクト的活動」と「イスラム政権に対抗するプロパガンダへの従事」をしたとされ起訴された。
この裁判では、被告人らの弁護士が弁護人として裁判所に登録されていないと裁判官が主張。そのため被告人らは、弁護人なしで裁判を受けることになった。しかしCSWによると、被告人らの弁護士は裁判が始まる10日前には必要な要件をすべて満たしていたという。3人は判決を不服とし、控訴する方針。
CSWは、当局が新条項の適応を、キリスト教の福音派や同国内の改革派運動、またイスラム教からキリスト教への改宗者にまで拡大しているようだと指摘している。
CSWのマービン・トーマス創立会長は、「新条項は『市民的および政治的権利に関する国際規約』の下でイランが信教や表現の自由を促進し、保護し、支持する義務を果たすことを著しく損なうものです」と訴える。
「これらの権利はすでに抑圧されており、今回の改正は国内の宗教的少数派にとってさらに厳しい状況をもたらす可能性が高いと思われます。私たちはイラン当局に対し、イラン国民の基本的人権の完全な実現を妨げる同条項および類似した法律を廃止し、司法制度によるキリスト教徒やその他の宗教的少数派に対する執拗(しつよう)な嫌がらせを終わらせるよう求めます」