イランの軍事組織の一つである「革命防衛隊」の精鋭部隊「コッズ部隊」のガセム・ソレイマニ司令官が3日、米軍の攻撃を受け死亡したことを受け、世界教会協議会(WCC、英語)は、米イラン両国の対立がさらに激化することへの強い懸念を表明した。
AFP通信や共同通信によると、米軍による攻撃は3日未明、イラクの首都バグダッドの国際空港で起こった。米軍のドローンが、ソレイマニ氏らが乗っていた車両にロケット弾数発を打ち込み、少なくとも8人が死亡した。死者の中には、イラクのイスラム教シーア派武装勢力の連合体「人民動員隊」の実質的な指導者、アブ・マフディ・ムハンディス副司令官も含まれていた。ムハンディス氏は、米国からテロリストに指定されている。米国防総省は発表で、攻撃はドナルド・トランプ大統領の指示によるものであったことを明らかにした。
WCCのオラフ・フィクセ・トヴェイト総幹事は、「ソレイマニ氏は、この地域の多くの地で起こった武器による暴力の立案者、推進者であり、戦争の罪なき犠牲者ではありません。しかし今回の攻撃と、それに伴い予想される反応は、この地域におけるより悲惨でさらに広範囲な対立を引き起こす恐れがあります」とコメント。「ソレイマニ氏の活動が情勢不安をもたらしてきたのと同じく、(今回の攻撃は)対立がより激しい地域の人々に、どのような結果をもたらすか計り知れません」と懸念を示した。
その上でトヴェイト氏は、米イラン両国に対し「最大限の自制を働かせ、(対立の)さらなるエスカレートを抑え、この地域に住むすべての人々の幸福、また何年にもわたる暴力と流血の後に彼らが手にした平和と安定に対する権利に優先順位を置く」よう求めた。
イランの最高指導者アリ・ハメネイ氏は、ソレイマニ氏の死を受け、3日間喪に服するとともに「血で手を汚した犯罪者は、重大な報復を受けるだろう」と述べ、米国への報復を表明。ハッサン・ロウハニ大統領も「イランは間違いなく仕返しをする」と語った。
一方、米国防総省は今回の攻撃について、ソレイマニ氏がイラクで米国の外交官や軍人に対する攻撃を計画していたとし、「米国の人員を守るための断固たる防衛措置」だったと説明している。
これに先立ち米軍は昨年12月29日、親イランのイスラム教シーア派民兵組織「神の党旅団(カタイブ・ヒズボラ)」への空爆を行い、同組織の戦闘員25人を殺害。その後、人民動員隊の支持者らがバグダッドの米大使館前で抗議行動を行い、一部が大使館の敷地内に侵入するなどしていた。