イランのペンテコステ派指導者の妻が、国家の安全を危険にさらしたとして、禁錮5年の判決を受けた。しかし人権擁護者らは、彼女が他のキリスト教徒と一緒に祈っていただけだと主張している。
「イラン人権センター」(CHRI、英語)が1月29日に伝えたところによると、首都テヘランの革命裁判所26支部は、イラン・アッシリア・ペンテコステ派教会の指導者であったビクター・ベット・タムラズ牧師の妻シャミラム・イサビさんに禁錮5年の判決を言い渡した。
イランのキリスト教徒をサポートしている英組織「アーティクル18」の広報担当者であるキアラシュ・アリポア氏はCHRIに対し、「私たちが知っている限り、そしてイサビさん自身の声明に基づけば、彼女がスパイ活動や国家の安全をかき乱すことに関与していたことを示す証拠は何も提示されていません。彼女は容疑のすべてを否認しています」と述べた。
「イサビさんは取り調べ中、イラン・アッシリア・ペンテコステ派教会が閉鎖されたとき、幾つかの家の教会に出席し、仲間のキリスト教徒と祈り、聖書について話し合ったと説明しました」。アリポア氏はそう述べ、「国家の安全がキリスト教信者の集まりによって脅かされることがあり得るなんて驚くべきことです」と批判した。
一方、イラン当局は、イサビさんが家の教会を組織しようとしたことで、「国家の安全を脅かした」と主張している。イランでは、家の教会を組織することや海外のキリスト教セミナーに参加することは認められていない。
2014年12月、タムラズ牧師はイサビさんと息子のラミンさん、他の12人のキリスト教改宗者と共にテヘランで逮捕された。タムラズ牧師と2人の改宗者は禁錮10年の判決を受け、もう1人の改宗者は禁錮15年の判決を受けている。
イラン政府はこの数カ月の間、反腐敗を掲げる抗議運動に直面しているが、昨年から続くキリスト教徒に対する弾圧の手は弱めていない。
モハバット・ニュースなどのイランの報道機関は昨年10月、一般のキリスト教信者も当局から圧力を受けており、信仰を理由に殴られたり、国外への強制退去をちらつかせられたりしていると報じた。
米国際宗教自由委員会(USCIRF)は昨年8月、冒とく法や宗教的少数派の取り扱いなどを取り上げ、信教の自由に関して、イランを世界最悪の5カ国の一国として挙げた。また、キリスト教迫害監視団体「米国オープン・ドアーズ」(英語)は最近、迫害が激しい国50カ国のリストで、イランを10位に挙げている。
一方、アルメニア使徒教会のテヘラン主教シボ・サルキシアンは最近、キリスト教徒がイランで「完全な自由を享受している」と主張し、論争を巻き起こした。
昨年末、スペインのEFE通信のインタビューに応じたサルキシアン主教は、キリスト教徒はイランで「いかなる方法でも迫害されておらず」、唯一の制約は公に信仰を分かち合うことだと述べていた。
しかし、モハバット・ニュースはこの主張に対して、伝道は聖書がすべてのキリスト教徒に対して、教派にかかわらず教えていることであり、これを禁じることはキリスト教信仰の本質的部分を制限することだと指摘していた。
CHRIは、イサビさんに禁錮5年を命じたマッシャラ―・アーマドザデフ判事が昨年3月以降、少なくとも16人のキリスト教改宗者に対して5年から15年の禁錮刑の判決を下しているとし、イランのキリスト教徒には依然として大きな試練があると指摘している。