英国のキリスト教団体が最近、オカルト的なスピリチュアリズムに警鐘を鳴らしている。新型コロナウイルスにより多くの人が愛する人を失い、悲しみに暮れる中、死者とのコンタクトを試みる人が増えているためだ。
英国バプテスト同盟(BUGB)の「バプテスト・デリバランス・スタディー・グループ」は最近、英バプテスト・タイムズ(英語)で、霊媒を使って亡くなった家族とコンタクトを取ろうとする人が増えていることに懸念を示した。
同グループのプロジェクトリーダーであるジェーン・アーラム牧師は、「愛する人に別れの言葉を伝えたいと切望する人々が、死者とのコミュニケーションを提供するスピリチュアルな考え方に引かれるのはよく理解できます」と話す。しかしその一方で、「このような方法で死者にコンタクトすることは、聖書では特に禁止されています。愛に満ちた神は、人々が異常な力、悪魔の力に縛られることのないようにと願っておられるのです」と警告する。
アーラム牧師によると、「恐ろしい結果」を経験し、スピリチュアリズムからの「解放」を求める人々からの問い合わせが、同グループに寄せられているという。
英プレミア・クリスチャン・ニュースとのインタビュー(英語)でアーラム牧師は、新型コロナウイルスによるロックダウンのために、多くの人が最期を看取ることなく愛する人を失い、望む形で葬儀を行えなかったと話した。
「きちんとしたお別れができず、最愛の人との最後の触れ合いも制限され、葬儀へ参列する人数も制限されました。そのため、人々の満たされていない心理的ニーズが蓄積されているのです」
マンチェスターにある「壁のない教会」を共同牧会するアーラム牧師は、「私たちは教会として、どのようにしてそれを満たすのか、キリストがどのようにしてそれを満たそうとしているのかを慎重に考える必要があります。そうすれば、最後には必ず束縛と苦しみをもたらすこのような行為に人々が頼る必要はないと説得できます」と話す。
アーラム牧師によると、悪魔崇拝やオカルト信仰にはまり、その後同グループに助けを求めてきた多くの人は、既成の教会よりも、こうしたスピリチュアリズムのコミュニティーの方により自分の居場所を感じると語っていたという。
「これはキリスト教会の課題であり、人々がなぜそのように感じ取るのかを注意深く考える必要があります。キリスト教会よりも魔術を専門とするグループの方が、目的意識や帰属意識、さらにはサポートを得られると感じている人がいるのは、とても悲しいことです」
「教会へのアドバイスとしては、何かを探し求め教会を尋ねてくる人、またスピリチュアルな事柄を探して回っている人に注意を払うことです。そして、キリストに従うことと、スピリチュアリズムの集会に行くことは両立できないことを、教義の中で明確にしておくことです」
英国では実際にスピリチュアリズムへの関心が「急上昇」している。
英タイムズ紙(英語)によると、英国内に約300拠点のネットワークを持つ英国スピリチュアリスト同盟(SNU)は昨年、新型コロナウイルスによるロックダウンが始まると、最初の1カ月間だけで入会申し込みが325%も増加したという。スピリチュアリズムへの関心の高まりは、第2次世界大戦後や、スペイン風邪の流行時にも見られたという。SNUのスポークスマンであるスティーブン・アップトン氏は次のように語った。
「通常の日常生活においては、人々は非常に忙しく、『人は死んだらどうなるのか』という疑問を持つ余裕はありません。突然、人々は時間を持て余すようになり、ニュースで(新型コロナウイルスによる)死亡者数を目にするようになりました。これは非常に不安をもたらすことであり、人々はおそらく第2次世界大戦以来、これまで経験したことのないようなストレスを感じています」