愛知県豊田市の集会場で発生した新型コロナウイルスのクラスター(感染集団)について、同県の大村秀章知事は13日に開いた臨時記者会見で、キリスト教の教会であったことを明かした。大村氏は、教会が感染症対策を行っていなかったとして「極めて遺憾」と語気を強めて繰り返し述べ、教会の使用禁止についても言及した。しかし豊田市によると、教会では基本的な感染症対策は行われていたという。
大村氏は会見で、教会では80人と50人の2部に分かれ、朝から大きな声で歌が歌われていたと説明。教会で祈りをささげたり、歌ったりすることは宗教行事の一部だとしながらも、感染リスクがある中、大人数で歌うのは「極めて遺憾だと言わざるを得ない」と語気を強めて語った。
さらに「気持ち的には、その施設はしばらく使うのをやめてもらいたい」と述べ、「自分たちだけ感染して熱を出し、家で寝てるというのであればよいが、そうはならない。結局、医療関係、皆に迷惑をかける」と発言。教会のクラスターがなければ、県内の感染者はもっと低く抑えられていたとの考えを示した。教会は「不用心、無防備」だったと批判した上で、「はっきり言って、勝手なことをされるのは極めて遺憾」と強い不満をあらわにし、教会の使用禁止も含め豊田市と協議すると述べた。
しかし、会見に参加した記者から法的根拠を問われると、「厳密な意味での使用禁止まではできないだろうが、相当な指導はできると考えている」と修正。「呼び掛けが徹底できていたのか」との質問には、県では11カ国語で感染症対策の呼び掛けを行っていると述べ、再度大人数で歌っていたことを問題視し、「それはお怒りを頂かないといけないのではないか。この時期ですから」と話した。教会に外国人が多かったのかを問う質問も出たが、回答はしなかった。
一方、豊田市の新型コロナウイルス感染症対策室によると、教会では、マスクの着用や手指消毒、間隔を空けるなどの基本的な感染症対策は行われていたという。「結果として(感染者が)10人以上になってしまったということだと思う」とし、対応については基本的に豊田市が教会側と話し合って行う内容と判断していると述べた。
教会でクラスターが発生したことは10日に判明。当初は11人の感染者だったが、12日までに計29人の感染が確認された。13日には豊田市全体で29人の感染者が出ており、大村氏は会見で、教会のクラスター由来による感染者について「50人は間違いなく超える」と述べていたが、豊田市の発表によると、同日までに確認されたのは36人となっている。
一方、岐阜新聞によると、同県でも最近、教会に関係するクラスターが発生している。より感染力が強い変異株によるクラスターで、感染者は4日のイースター(復活祭)を祝うため教会に集まった外国人だった。イースターには100人規模が集まり、食事も行われたという。11日までの検査で90人は陰性となったものの、17人が陽性となった。
続報:豊田市の発表によると、教会のクラスター由来による感染者は16日現在、51人となっている。