「ソウルの女王」と呼ばれたアレサ・フランクリンの代表的ライブアルバム「アメイジング・グレイス」を収録するために、1972年に米ロサンゼルスの教会で行われたライブを収めた映像が、撮影から49年を経てドキュメンタリー映画として公開される。
60年以上にわたる歌手活動で、累計7500万枚のレコード、アルバムを売り上げたアレサは、誰もが認めるポップ音楽界の大スター。2018年にすい臓がんのため76歳で亡くなるが、グラミー賞受賞回数は18回に上り、ロックやゴスペルなど各音楽分野で殿堂入りを果たした。さらに05年には、米国民にとって最も名誉のある大統領自由勲章を受章している。
「アメイジング・グレイス」は、1972年1月13、14日の2日間、米ロサンゼルスのニューテンプル・ミッショナリー・バプテスト教会で行われたライブを収録したアルバム。売上枚数は300万枚を超え、アレサの最も売れたアルバムであるだけでなく、ゴスペル史上最も売れたライブアルバムでもある。
アレサが契約していたアトランティック・レコードは当時、合併によりワーナー・ブラザース系列となっており、このライブはアルバム用の収録だけではなく、映画化のための撮影も行われた。撮影したのは、映画「愛と哀しみの果て」で知られるシドニー・ポラック。後に同作でアカデミー賞を受賞する当時も売れっ子の監督だったが、この撮影ではカチンコを使用しなかったという。2日間の撮影は5台のカメラを使っての素晴らしいものだったが、カチンコを使わなかったため音と映像を一致させる目印がなく、編集作業は困難を極めた。読唇術ができるスタッフを雇うなどするも、予想以上に時間がかかり未完のまま頓挫。その後長らく封印され、まさに「幻の映画」となってしまった。
しかし1990年、映像の存在を知ったアトランティック・レコードの元社員が映画化のために動き出す。その後の技術的な発展も後押しし、かつてできなかった音と映像のシンクロを数年かけて実現させた。アレサは2018年8月に亡くなるが、遺族との交渉を経て同年末、ニューヨーク・ドキュメンタリー映画祭で初上映された。
日本では5月28日から、Bunkamura ル・シネマほかで全国ロードショーされる。また5月12日には、映画サウンド・トラック盤がCD2枚組でワーナーミュージック・ジャパンから再リリースされる予定。
■ 映画「アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン」予告編