旧新約聖書全巻の翻訳が世界700言語で完成した。英国ウィクリフ聖書翻訳協会が、公式サイト(英語)で発表した。
同協会のジェームズ・プール事務局長は、グローバル・ニュース・アライアンスのピーター・ウッディング氏のインタビュー(英語)に応え、聖書の翻訳事業が一里塚を迎えたのに、どの訳が700番目だったのか分からないのは、この働きが加速していることの表れであると語った。
「実は9月には701番目の新旧約聖書の新しい訳ができます。新しいことが続けざまに起きており、神様のなさることを見ることができるのは、本当に素晴らしいと思います」
プール氏は、コロナ禍の中でも神が聖書翻訳を通して働き掛けているとし、「神様のより優れた計画がどのようなものか誰に知ることができるでしょうか。世界中の数多くの人が神様の言葉に接することができるようにしてくださり、困難な過程を歩んでいるとしても、それを通して教会が成長するようにされるのです。私はこれを考えると興奮します」と述べた。
ウィクリフ聖書翻訳協会は、今後10年から15年で世界人口の80から95パーセントの人々が、母国語で聖書を読めるようにするという長期計画を掲げている。聖書の翻訳事業に携わる人の数は年々増えており、新約のみであれば、この時期までに世界人口の99・95パーセントをカバーすることができる見込みだという。
上海交通大学のマティアス・ゲルナー教授(言語学)が2017年に発表した論文「聖書翻訳事業の指数関数的成長の要因」(英語)によると、聖書の翻訳言語は、過去2300年間で1815年を変曲点として年1パーセント以上の成長率を遂げるようになったという。ゲルナー氏は、1815年から1914年までの成長要因としてキリスト教復興運動、国際化、産業化を挙げ、その後から今日までに起こった爆発的成長は、情報技術、聖書翻訳団体の組織構造に後押しされたものだとしている。
ゲルナー氏の統計によると、聖書が旧新約全巻、新約のみ、一部のみに翻訳された言語の合計は、1914年には572言語だったが、2013年には2850言語に到達している。ゲルナー氏は、少数言語の変化が21世紀以降著しいため、翻訳が必要な正確な言語数を把握することは困難としながらも、3500~3800言語と予想されると指摘。その上で、自身の数理モデルに基づけば、翻訳が必要となる世界の全言語で聖書(旧新約全巻、新約のみ、一部のみ)の翻訳が完成するのは、2026年から2031年になると予想している。
アメリカ言語学会の記事「世界には幾つの言語があるのか?」(英語)によると、2009年時点で世界には約250の語族に分類される6909の言語があり、このうち欧州には230言語、アジアには2197言語が存在するという。