「フードパントリー」と呼ばれる貧困者への食料支援が教会によって広く行われている米国で、カリフォルニア州のメガチャーチ「サドルバック教会」が、地元の行政と協力して、新型コロナウイルスにより急増した困窮者のために、大量の食料を届ける働きを行っている。
サドルバック教会が所在する同州オレンジ郡の地元紙「サンクレメンテ・ジャーナル」(英語)によると、同教会は以前から食料支援を行ってきたが、新型コロナウイルスの影響で必要がさらに増大したことを受け、3月から支援を拡大。施設での受け取り式からドライブスルー方式による大規模な配給に変え、1週間に100世帯以上に配給する拠点もあるという。配給する食料は、食品メーカーなどからの寄付を集約する「フードバンク」から供給を受けている。
同教会のリック・ウォレン主任牧師は、サンクレメンテ・ジャーナルに対し「この時こそ、教会が神様の意図した通りに生きる時です。危機の暗闇の中で、私たちの教会が光を輝かせるようになることを願っています」と語った。
同教会のラナ・マンシー宣教主事は、別の地元紙「デイリー・パイロット」(英語)の取材に対し、同教会が11年にわたって食料支援を続けていることを説明。新型コロナウイルスの感染が拡大してからは、毎月2500世帯だった供給量を毎週5千世帯に拡充させ、3月から7月末にかけて計1360トンもの食料を配給したという。
この教会による食料支援の働きには、地元の行政関係者も積極的に参加しており、その活動を高く評価している。オレンジ郡第1地区行政執行官のアンドリュー・ドゥ氏は6月、約250人の教会ボランティアとドゥ氏のスタッフらと協力して、1日に1200世帯に食料を配給した。自身のフェイスブックなどに支援の様子をまとめた動画を投稿し、教会の働きに感謝を示した。
郡管理委員会委員長で第2地区行政執行官のミシェル・スティール氏も7月、この活動に参加し、教会ボランティアと協力して1日に1400世帯に食料を配った。スティール氏は「この危機の中で住民の生活を少しでも楽にするために、地方行政組織と地元の信仰共同体が協力することは不可欠なことです」と強調した。
第5地区行政執行官のリサ・バートレット氏は、地区のニュースレター(英語)でこの活動を紹介し、「サドルバック教会に深く感謝します。この困難な時に、必要のある人々を食べさせようとする彼らの努力には目を見張るものがあります」と述べ、同教会と配給場所を提供した地元ショッピングモールに謝辞を述べた。
同教会では、食料を必要とする人々が入力しやすいように、saddleback.com/getfood と短く覚えやすいURLの食料支援専用ページを設置。食料を必要とする人のためには、配給場所と時間を、ボランティアに志願する教会員のためには、奉仕の種類ごとの申請方法を、保存食の寄付の方法と共に掲示している。この他、フェイスブック(英語)では、食料支援の奉仕に関する証しや近況報告などの情報も発信している。
米国ではこのように、教会が地域の必要に応える活動を積極的に行っている。テキサス州のメガチャーチ「レイクウッド教会」(ジョエル・オースティン牧師)もその一つで、今月初めには、キリスト教国際NGO「ワールド・ビジョン」と協力して、食料の足りない人々に新鮮な食べ物が入った1万2千箱の食料を届けた。
フードパントリーやフードバンクなどの食料支援の社会インフラは、米国に比べ日本はまだ未発達だが、NPO法人「セカンドハーベスト・ジャパン」などが行政や教会、企業などと協力し、普及に努めている。