1. 突然の指名
外国の大きな教会の創立25周年記念大会に日本人ゲストの一人として招かれた。大サッカー場に5万人の会衆が集まっている。
「佐々木先生、ぜひ祝辞をお願いします!」開会数分前に突然、主任牧師からこう言れた。何も準備していなかったので、頭の中が真っ白になる。私の一番の苦手はスピーチだ。「主よ、助けてください!」心の中で叫んだ。
すると、「わたしの恵みはあなたに対して十分である。わたしの力は弱いところに完全にあらわれる」(2コリント12:9)とひらめいた。勇気を出して壇上に立ち、無我夢中で話しているうちに、「もう時間です!」と司会者に何回も注意された。
2. 両手両足がない人
その大会のメインスピーカーは、オーストラリアのニック・ブイチチさんだった。ニックさんは両手両足がないまま生まれた。幼少期を肉体的、精神的に大きな苦労とともに成長する。学校でいじめられたりして、何度も人生に絶望し自殺を考えた。
「神様はどうして私から手足を奪ったのか?」これがニックさんの深刻な疑問であった。手で持つことも、足で歩くこともできない、だから、就職もできない、結婚もできない・・・。
15歳の時にその疑問が解ける。「本人が罪を犯したのでもなく、また、その両親が罪を犯したのでもない。ただ神のみわざが、彼の上に現れるためである」(ヨハネ9:3)というキリストの言葉によって。ニックさんは、自分はキリストによって新しく造られた「神の子」であり、自分の内にはキリストが住んでおられることを悟った。以後、持っていないことを嘆くのではなく、持っている物に感謝し、何事にも積極的に挑戦するようになった。
両親から離れて一人で住み、何でも自分でするように訓練した。歯を磨く、髪をとかす、シャツを着る、聖書や新聞のページをめくる、プールで泳ぐ、ボールゲームをする、モーターボートを運転する・・・。
その後、ニックさんはNPO法人を経営しながら、福音の伝道者として、日本を含む世界37カ国で講演ツアーを行い、自分の証しを通して数億人にキリストの福音と生きる希望を語り、少なくとも20万人以上が救われたという。今は、美しい日系人の女性と結婚し、4人の子どもに恵まれている。
3. 強く生きるには
天の父は、信じる者が強く生きることを望んでいる。パウロも「男らしく、強くあってほしい」と言っている(1コリント16:13)。それでは、どうしたら強くなれるのだろうか。
逆説的であるが、自分の弱さを悟ることである。パウロほど数々の試練に遭遇して苦しんだ人はあまりいない。「もうだめだ!」「もう頑張れない!」の連続であったのだと思う。その度にキリストの恵みを受けて強く立ち上がったに違いない。
「みんな疲れているんですよね。頑張れと言われても頑張れない人がほとんどです。自分もそうです。まず、イエス様の前でゆっくり休んでください。そしてイエス様から恵みを受けて強くしていただきましょう!」
あるミッションスクールの校長先生の口ぐせである。キリストは、弱っている者を愛をもって受け入れてくださり、その弱さをご自分の恵みで満たし強くしてくださるお方である。
パウロは「喜んで自分の弱さを誇ろう」と言ったが、それはキリストの力が自分の弱いところに完全に現れるためである。だから、「わたしが弱い時にこそ、わたしは強いのです」と言えたのである(2コリント12:9、10)。
◇