キリスト教精神に基づき世界の子どもたちを支援している国際NGO「ワールド・ビジョン」は、レバノンの首都ベイルートで起きた大規模爆発を受け、緊急支援募金の受け付けを開始した。家を失った子どもたちが支援を確実に受けられるよう、食料や衛生用品の配布、短期的な宿泊施設の提供や家屋の修理などを視野に入れた12万人規模の緊急支援を準備している。
今回の爆発により、ワールド・ビジョンが10年以上にわたって関係していた地域が被害を受けた。ワールド・ビジョン・レバノンのハンス・ベダースキー事務局長は、「爆発が起きる前、私たちは(難民支援などのために)食料パッケージを提供していました。しかし、それに含まれる生鮮食品のほとんどは輸入品であり、大部分は港を経由してきていました」と語る。「爆発は、最も弱い立場にある人々に食料を届ける私たちの活動と能力に深刻な影響を与えます。国内の在庫が底をつくと、新規の入荷は非常に難しくなるのではないかと懸念しています」
爆発の被害を受けた子どもたちには「心理的応急処置」(PFA)を実施しているが、子どもたちの受ける影響の長期化も懸念されている。ワールド・ビジョンのスタッフであるチャーベル・エル・クーリーさんは、「子どもたちはこの悲劇的な出来事によって生じた破壊の凄まじさと衝撃を、決して忘れないでしょう」と語る。
今回の爆発では、130人以上が死亡、約5千人が負傷し、推定30万人が一瞬にして住居を失った。多くの人々が行政施設に避難しているが、行き場のない人もいるという。現場の被害状況を調査したワールド・ビジョンの支援事業ディレクターであるラミ・シャンマさんは、「破壊の状況は、まるで以前の紛争や武力衝突の状況そのものです。この爆発による影響の実態を推し量るのは非常に困難です」と語る。
「人々は、がれきに覆われた変わり果てた日常風景に、一様に大きなショックを受けています。どこから手を付けてよいのか分からないといった様子に、胸が張り裂けそうです。しかし、ほうきや手袋、バケツなどで家や通りの掃除を始める人々もいました。その連帯感に希望が持てます。私たちはきっと、この最悪な状況から抜け出すことができるでしょう」
今回の災害は、レバノンが自国の経済危機と新型コロナウイルスの急速な感染拡大、さらにシリア難民の受け入れという3つの危機にある中で起こった。レバノンは国民1人当たりの難民受け入れ数が世界で最も多く、推定150万人に上るシリア難民と、約2万人の他地域からの難民に加え、国連の要請によりパレスチナ難民も受け入れている。
シャンマさんは、「この状況に適切に対応し、レバノンで絶望的な状況にある子どもとその家族を支援するためには、500万米ドル(約5億2800万円)の資金が必要です」と指摘する。「コミュニティーの再建と人々の回復を支援するためには、国際社会と支援者の方々のご協力が不可欠です。レバノンはもう十分に苦しんでいます。彼らは強い人々ですが、この悲劇を生き抜くためには、世界の支援が必要です」と訴えた。寄付は、ワールド・ビジョンの日本支部であるワールド・ビジョン・ジャパンのサイトで受け付けている。