レバノンの首都ベイルートで4日発生した大規模な爆発を受け、爆心地から最も近い距離に位置していたキリスト教会であるシティーバイブル教会のマルワン・アボウルゼロフ牧師が現地の状況を伝え、祈りを呼び掛けている。
シティーバイブル教会は福音派の教会で、アボウルゼロフ牧師は、福音派のネットワークである「ゴスペルコアリション」のウェブサイトに5日、寄稿「ベイルートのがれきからの絶望と光」(英語)を寄せた。爆発2日前の日曜日、教会で祈った際に読んだという詩篇13篇の聖句「主よ。いつまでですか。あなたは私を永久にお忘れになるのですか」が心の中で鳴り響いていると言い、「今夜これは私の街の叫びなのです」とつづった。
アボウルゼロフ牧師によると、経済危機にあるレバノンでは、現地通貨がその価値を8割も落とし、銀行は預金の引き出しを制限している。さらに「政府の腐敗に対する革命の最中でもあり、地方では飢饉や大きな山火事が起こっています。もちろん、新型コロナウイルスによるパンデミックも」という状況。そんな状況の中で起こったのが、今回の爆発だった。
「今回、爆発によって国の第一の港が失われました。この国の生き残りが、輸入に大きくかかっているというのにです。人々が今感じている絶望、落胆、怒りを表す言葉も見つかりません。たくさんの人が命を失いました。何千人もの人が負傷しました。さらに大量の人が、いきなりホームレスになってしまいました。生ける神の中にある生きる希望なしに、この廃墟を何とかやっていこうとしているこの街の人々を思うとき、私の心は引き裂かれます」
「たった400メートルしか離れていなかったのです。私の教会が爆心地から一番近い教会でした。今日(5日)、何人かの教会員と一緒に教会に行き、何か回収できそうなものがないか見てこようとしました。私たちの建物は破壊されていました。建物という建物が、まさに破壊されていました。戦場のようでした。私の心と精神に何が起きているのか、表現するのが困難です。圧倒的な神様の臨在を今、感じています。しかし、私が持っているもののほとんどは問いであり、答えは少ししかありません。教会でこの破壊について考え続けました。そして、どうして神様の優しさの中で、爆発が日曜礼拝の最中に起きなかったのかを考えました。私たちの教会員の誰も大けがをしませんでした。ただ、彼らの(家の)窓が割れて部屋の中に物が散乱しただけでした。私の家は爆心地から1・6キロほど離れた所にあり、建物自体は損害を受けましたが、部屋にはほとんど影響がありませんでした」
爆発が起きたとき、アボウルゼロフ牧師と家族はベイルートにいなかったという。爆発の数時間前に、結婚10周年を祝うために山に出掛けていたが、96キロも離れていたのに爆発の音が聞こえたという。「これらは身に余るほどの主の慈しみでした」とアボウルゼロフ牧師は振り返る。そして教会開拓をするため、ベイルートに引っ越そうと決めたときに感じた圧倒的な思いが再び迫ってきたという。
「ベイルートは美しくもあるのですが、同時に痛みと苦しみにいつも悩まされている場所です。その時、私は考えながら『どこから始めたらよいのでしょうか。神様、あまりにもすべきことが多過ぎます』と祈っていました。今、同じ問いをしています」
「あまりにも多くの支援活動が必要です。あまりにも多くの建物を再建する必要があります。あまりにも多くの家庭が長期的な手助けを必要としています。しかし私は信じます。最初に教会開拓をしたときと同様、ベイルートの最も素晴らしい希望は、安定した経済や誠実な政治家にあるのではなく、血の代価で贖(あがな)われた信仰者たちにあるのです。彼らこそ、福音の希望と力を持ってくることができるのです。だから私たちは祈り、信頼しています。このすべての暗闇と破壊の真っただ中で、レバノンのイエス・キリストの教会が光を輝かせることを」
そしてアボウルゼロフ牧師は、祈りの課題として次のように述べ、世界中のクリスチャンに祈りを求めた。
「どうかそのような結末が来るように私たちと共に祈ってください。祈ってください。なぜなら収穫は多いのですが、働き人は少ないからです。傷ついた人々の世話をするため教会が活動する中で、知恵が与えられるようにお祈りください。キリストの強さが私たちの弱さの中で表れるように祈ってください。この非常に荒廃とした時の中で、私たちが福音を固くつかむように祈ってください。残された人々がイエス様を見るようになり、最も重要な必要が満たされるように祈ってください」
「信じてください。私たちと共に。どんなものも、不景気も、爆発も、荒廃も、王であるイエス様の力を、彼の教会を建てる力を妨げることはできないということを」