新たな遺伝子研究によれば、聖書に記されているカナン人の子孫が、今日も中東のレバノンで生きているという。
この研究は7月27日に、米科学誌『アメリカン・ジャーナル・オブ・ヒューマン・ジェネティクス』(電子版、英語)で発表された。ヒトゲノム解読などを行う英サンガー研究所の遺伝子学者らが、カナン人の主要な古代都市国家であったシドン(現在のレバノン第3の都市サイダ)で見つかった約3700年前の5人の遺体からDNAを抽出し、ゲノム配列を解析。これを現代のレバノン人99人と比較したところ、カナン人の遺伝子組成の約90パーセントを受け継いでいることが分かったという。
研究者らは論文で、「私たちは、現代のレバノン人の先祖の多くがカナン人と関係した人々であることを明らかにしました。つまり、少なくとも青銅器時代以来、レバノン人には(カナン人との)実質的な遺伝的連続性があることを暗示しているのです」と述べている。
カナンはパレスチナ地方の古称。聖書では、神がアブラハムの子孫(イスラエルの民)に与えると約束した地とされ、「乳と蜜の流れる場所」「約束の地」などと記されている。神の命令を受け、イスラエルの民はカナン人ら原住民たちと戦い、その地に定住するようになるが、聖書は一部のカナン人がその地に住み続けたことを記している(士師記1章)。