新型コロナウイルスの感染防止のため、約1カ月半にわたってさまざまな施設の閉鎖措置が取られていたドイツで、教会などの再開が今週から許可され、日曜日の3日には多くの教会で対面式の礼拝が行われた。しかし感染防止のため、接触制限などさまざまな措置は継続されており、ドイツの公共国際放送「ドイチェベレ」(英語版)によると、賛美を歌うことや握手などは禁止されている。礼拝参加者はこの他、マスクの着用が義務付けられており、社会的距離の確保のため1・5メートル以上離れて席に着く必要がある。
平時は1日平均2万人が訪れるカトリック教会のケルン大聖堂ではこの日、参加者数を122人に制限してミサを行った。参加できたのは招待された関係者のみで、6日からは公開のミサも始めたが、参加者数の制限は継続している。ミサではこの他、聖体拝領時、聖体を受けるために並ぶ信徒たちが近づき過ぎないよう、床に立ち位置の印を付け、握手を伴う「平和のあいさつ」は取りやめる対応を取るなどしている。
ドイツでは、教会の他にも美術館や動物園、子ども用の遊技場は今週から再開が許可され、小規模な商店に限っては4月20日から営業が認められている。さらに6日には、アンゲラ・メルケル首相が、国内のすべての規模の商店やプロサッカーリーグ「ブンデスリーガ」の再開などを認める方針を発表した。一方、互いに1・5メートル以上の距離を取るよう求める接触制限は6月5日まで延長。この他、施設に入れる人数の制限やマスクの着用は教会以外の施設などにおいても義務付けられている。
メルケル氏はこうした規制緩和策を出す一方、「われわれは、新規感染数をさらに確実に減らすことに取り組まなければならない」と強調。「感染曲線が再び急になることがあれば、われわれはそれを早期に発見し、行動に移せるようにするための警告システムを持つ必要がある」と語った。
教会での礼拝が再開されたことについて、ベルリン・カトリック事務局代表のカール・ユステン司祭は、「これは信仰者にとって、信教の自由と感染防止を調和の内に両立できるという良い兆しです」と歓迎した。
同じく感染防止のため、大型教会での礼拝を制限していた韓国では、ドイツより1週間早い4月26日から、同じくマスクを着用したり参加者同士の距離を確保したりするなどして礼拝が再開。また米国でも、幾つかの教会で対面式の礼拝を再開するところが出てきている。
一方、ギリシャでは規制緩和に向けた動きが出ているが、対面式の礼拝は制限を継続することが決まった。こうした政府の方針に対しギリシャ正教会は反発。米国営放送「ボイス・オブ・アメリカ」(英語)によると、同教会の広報担当者であるナフパクトス府主教ヒエロテオス・ブラコスは報道陣を前に、「政府は教会を何だと思っているのだろうか。スーパーや労働組合、ネイルサロン、美容室のようなものだと考えているのだろうか」と批判した。
米ジョンズ・ホプキンズ大学の新型コロナウイルス資料センター(英語)によると、日本時間7日午後4時現在、ドイツの累計感染者数は16万8162人(世界6位)で、死者数は7275人(同8位)。しかし、1日当たりの新規感染者数が千人を切るようになり、ピーク時の1割近くに減少。1人の感染者が何人に感染させるかを示す「実効再生産数」(Rt)も、収束の目安となる1を大きく下回る0・7前後で推移している。