米福音派の国際支援団体「サマリタンズ・パース」は20日、新型コロナウイルスの感染拡大で苦しむイタリアを支援するため、同国北部ミラノ近郊に68床の救急野外医療施設を開設した。
イタリアでは23日時点で、新型コロナウイルスの感染者が6万3927人、死者が6077人に上り、感染者はウイルス発生地の中国に次いで多く、死者はすでに中国を上回って世界で最も多い。医療態勢が追い付かず、一部の地域では医療崩壊の状況にある。
「イタリアの状況は絶望的です」。サマリタンズ・パース総裁で、世界的な大衆伝道者、故ビリー・グラハム氏の息子であるフランクリン・グラハム氏は声明(英語)でそう語った。
「病院は受け入れ超過で、患者たちは次々に死んでいます。現場では厳しい対応が求められています。われわれの災害対応専門家チームが最前線にいるのはそのためで、命を救う医療を提供し、傷ついた人々に神の愛を分かち合っています」
イタリアでは感染した多くの家庭が必要なケアを受けられずにおり、サマリタンズ・パースは17日、医療チームと共に救急野外医療施設の設備と緊急援助物資を、大型ジェットDC-8型貨物機でイタリア北部へ輸送した。医療チームは呼吸療法士や医師、看護師ら32人からなり、届けられた医療機器は計20トンに及ぶ。サマリタンズ・パースによると、救急野外医療施設は20日に開設された後、間もなく患者を受け入れ始めたという。
救急野外医療施設は呼吸器治療室を完備しており、ミラノから車で約1時間半のクレモナ病院に隣接する形で設置された。クレモナ病院はコロナ感染者が殺到したため、産科と小児科を除くすべての通常医療を停止している。
サマリタンズ・パースによると、クレモナ病院の集中治療室に収容されたコロナ感染者で命を取り留めた人は一人もいなく、病院のベッドも不足している。
「サマリタンズ・パースが災害に対応する際は、毎回イエスの御名によって対応しています」とグラハム氏は話す。「それ故、私たちは、苦しみの中にあり、死にかけているイタリアの方々のところに行き、思い遣りと愛を示し、神の御子イエス・キリストについて語るのです」
イタリアでサマリタンズ・パースの呼吸器治療チームの医療責任者を務めるケリー・スーター氏は、「(地元の医療専門家たちは)私たちが自ら進んでやって来て、一緒に闘っていることに感謝しています」と語った。
「私が話し掛けるほとんどすべての人は、涙を流しそうになります」とスーター氏。「この人たちは見捨てられたと感じていました。自分たちは無力だと感じていたのです。そして、奇跡を求めていました。ですから、この人たちは、私たちがここに来て一緒に闘う覚悟があることに絶大な感謝を表明しているのです」
サマリタンズ・パースは21日、医療品やレスポンダー(初期対応者)を輸送する第2便を派遣した。
サマリタンズ・パースの疾病専門家らは、世界保健機関(WHO)や米疾病管理予防センター(CDC)と協力し、必要な予防措置が取られるよう取り組んでいる。
今回イタリア北部に設置された救急野外医療施設は、「医療設備が損壊していたり、極度の被害を受けていたりする。あるいは、医療設備自体が存在しない被災地で緊急医療支援を提供する」目的で設置されるもので、これまで長年にわたり、何千人もの患者の治療に利用されてきた。
昨年は、9月にはハリケーン・ドリアンで被災した南インド諸島のバハマに、4月にはサイクロン・イダイの被害を受けたアフリカ南部のモザンビークに設置された。また2016年4月には、マグニチュード7・8の地震が発生した南米エクアドルに、同年12月には過激派組織「イスラム国」(IS)掃討戦下のイラクに設置されている。