マレーシアで17日、新型コロナウイルスに感染したバプテスト派の牧師が亡くなった。感染による同国最初の死者2人のうちの1人で、糖尿病と高血圧の基礎疾患があったという。牧師の妻と娘も検査の結果、陽性となり入院しているが、息子は「心配しないでください。私たちは依然として平安の内にいます。死は痛みではありません」と述べ、父の死後も家族が信仰の内に歩んでいることを伝えた。
亡くなったのは、ボルネオ島西部サラワク州にあるインマヌエル・バプテスト教会のデイビッド・チェン副牧師(60)。シンガポールの放送局CNA(英語)やマレーシアの日刊英字紙「ザ・スター」(英語)によると、チェン牧師は7日から発熱とせき、またそれに伴う呼吸困難の症状が出始め、14日に感染が判明しサラワク総合病院に入院した。しかしその後、容体が悪化し、集中治療室に運ばれたが、17日午前11時ごろに亡くなった。チェン牧師は、糖尿病や高血圧などの基礎疾患があったという。
キリスト教情報サイト「ソルト・アンド・ライト」(英語)によると、チェン牧師の息子で教師のアンダースさんは、父に対する祈りと支援に感謝を示しつつ、次のように語った。
「少し悲しみの時を過ごさせてください。しかし心配しないでください。私たちは依然として平安の内にいます。死は痛みではありません」
「父は、痛み、病気、悲嘆、悲しみ、心配などのない場所にいます。私たちのどの人よりも素晴らしい場所にいるのです。ですので、私たちは賛美の衣を着て、この嵐の中にあっても喜んでいます」
チェン牧師の妻シム・リーナさんと、娘のラベンダーさんは検査の結果、陽性となった。インマヌエル・バプテスト教会の発表(英語、20日付)によると、同教会は新型コロナウイルスの「クラスター」(感染者集団)とみなされているが、チェン牧師と直接接触のあった教会員の多くが検査を受けたものの、これまでのところリ-ナさんとラベンダーさん以外は全員が陰性だったという。
リーナさんとラベンダーさんは現在、サラワク総合病院に入院している。また、症状のない教会員も、チェン牧師と最後に接触のあった8日から数えて2週間の自宅隔離を実施しており、これまでのところ全員に異常は見られないという。また15日には、マレーシア保健省のチームが同教会の建物全体の消毒作業も行った。一方、チェン牧師の感染経路は17日時点でまだ判明していない。
この日亡くなったもう1人は、34歳の男性。首都クアラルンプールにあるモスク「マスジッド・ジャメ」で、2月27日から3月1日にかけて開催された宗教行事に参加して感染したとみられる。同国では、この行事に関連して400人以上に感染が拡大。男性は5日に感染が確認され、マレー半島南部ジョホール州の病院で亡くなった。
マレーシア保健省によると、同国では22日までに、1306人が感染し10人が死亡した。139人は回復して退院したものの、22人が集中治療室で治療を受けている。