財政難などにより、2021年までに米カリフォルニア州パサデナのメインキャンパスを売却し、同州ポモナへの移転を計画していたフラー神学校が、移転計画を中止すると発表した。同州南部における建築コストの高騰が原因。10月24日に開かれた理事会で決定した。
パサデナとポモナはいずれも同州南部のロサンゼルス近郊に位置する都市で、両都市間の距離は50キロほど。しかし、同大のマーク・ラバートン学長の発表(英語)によると、両都市における建築コストの高騰には差があり、それがポモナの新キャンパス建設費用とパサデナのキャンパス売却価格に影響を与えた。24日の理事会では、全会一致でパサデナへの残留を決めた。
一方、本部の一部オフィスのヒューストン・キャンパスへの移転や、オンライン授業の充実、アリゾナ・キャンパスにおける結婚・家庭セラピー(MFT)専攻の強化などは、従来通り計画を進める。
ダン・マイヤー理事長は、「(キャンパス移転が)フラー神学校の未来にとって最善の選択となるためには、当初の計画で想定していた経済状況と移転時期が、余りにも著しく変わってしまいました。われわれは前進するため、別の前向きな道筋を決めました。今後はこの計画を推進するためにまい進していきます」と説明した。
同校の戦略的計画運営委員会は今後、教授陣や経営陣とさらに協議を重ねた上で、残留計画案の詳細をまとめ、来年1月の理事会に提出する予定。パサデナ・キャンパス内の一部機能の統合や一部施設の売却、負債の削減と来年から実施予定の献金キャンペーンによる財政の健全化、入学者の増加とその維持に向けた検討などが行われる。
同校は1947年、ラジオ伝道者のチャールズ・E・フラーらによってパサデナに設立された。同校のウェブサイトによると現在、世界90カ国110教派から約4千人が学んでいる。日本人では、ワールド・ビジョン・ジャパン理事長や太平洋放送協会(PBA)会長などを務めた羽鳥明氏、JTJ宣教神学校前学長の岸義紘氏、東京基督教大学(TCU)元学長の倉沢正則氏ら、多くの福音派指導者を輩出してきた。