日米の神学者たちが今後100年の日本のキリスト教会のあり方を見据えつつ、震災後の教会が今なすべき働きについて考える第3回「東日本大震災国際神学シンポジウム」(東日本大震災救援キリスト者連絡会など主催)が15日、東京都千代田区のお茶の水クリスチャン・センターで開かれた。フラー神学大学院副学長のホアン・マルティネス(Juan Martinez)氏が「イエスの示したように苦しみ、また仕える―災害後の意味形成について―」と題して講演し、「大震災から3年が経つ今こそ、キリスト者がどのようにあの災害に応答したかを語り直すべき」と語った。
マルティネス氏は、「(震災の経験を語り直すことは)痛みを伴う」としつつも、「このプロセスを行う最も重要な理由は、神の臨在のうちにあの震災を語り直すことにある」とし、人類を救いに導く神の計画の中に震災の経験を見出すための作業として「繰り返し語る」ことの重要性を強調した。
マルティネス氏は、キリストの十字架について「命をもたらすものであるばかりか、キリストに従う者が歩むべき人生の道でもある」と説き、「神は私たちの苦しみのうちに働き、痛みのなかにあっても神の働きを認識するよう招いておられる」と述べた。
また、「キリスト者が宣教や奉仕にその人生を捧げる時、それは一種の犠牲を伴う苦しみとして理解することができる」とし、「これは他者のためにキリストになることでもあり、残り物をささげるのではなく、自分の存在の中心にあるものをすべてキリストの名のために捧げることでもある」と説いた。
マルティネス氏は、「苦しみがそれ自身の目的になる時や、苦しみを解釈する理論的な枠組みがない時、苦しみは簡単に運命として片付けられてしまう」とし、「震災とそれへの応答の話を繰り返し語ることによって、皆さんは苦しみの中にいる人たちに、彼らの苦しみの持つ意味を示唆することができる」と語った。
さらに、「この意味を作り出す作業を可能にするには、私たち自身が、神が私たちの生活の中で働くことを許し、また神の臨在と未来の希望の中に歩むことが求められる」とし、「そのためには、人間の歴史に展開する神の壮大な物語と働きの中に私たちの物語をつなげなければならない」と強調した。
マルティネス氏は、「私たちの苦しみをキリストの苦しみのうちに見い出すにつれて、私たちの人生さえもキリストの働きとキリストの臨在の約束によって守られているということを理解できるようになる」と説き、「過去を振り返るという行為を通して、聖霊にある新しいいのちと神がたゆまず励ましてくださっているという事実を経験することができる。同時に、神は私たちの人生のうちに新しいものを創り続けており、新しくされた未来に導いてくださっていることも知ることができる」と述べた。
マルティネス氏は、「(痛みや死についてと同時に)災害時の奉仕と犠牲の証も語られなくてはならない」と強調し、「震災について語られることばは、災害が人々に与えた影響に対して、人間が何をすることができ、何をすべきか教えてくれる」と語った。
また、「私たちの語りは、死の問題についてもふれなくてはならない」とし、「死を深く認識することは、同時に、『身体のよみがえりととこしえのいのちを信』じる信仰を私たちが持っていることを、世界に宣言する機会が与えられたことでもある」と述べた。
最後にマルティネス氏は、「災害時に何があったかを分かち合うことは、今日でもまだ多くの仕事が残されていることを理解するきっかけにもなる」とし、「私たちの語りが未来への方向性をもつ助けになり、そして日本の諸教会がより忠実に神の宣教に携わることを可能にする」と語った。