英国の首都ロンドンにある英国国教会(聖公会)のウェストミンスター寺院で15日、同寺院の750周年記念を祝う礼拝が執り行われた。同寺院のジョン・ホール首席司祭が礼拝を導き、エリザベス女王のほか、チャールズ皇太子の妻であるカミラ皇太子妃らが出席した。
現在の寺院は1269年10月13日、ヘンリー3世の臨席の下で聖別された。寺院はもともと、エドワード懺悔(ざんげ)王によって約200年前の1065年に、ロマネスク様式の修道院として建設されたが、その後ヘンリー3世が現在のゴシック様式へと大改修した。今回の記念礼拝は、この大改修された寺院の750周年を祝うもの。
「ヘンリー3世の高潔さに感謝します。彼の想像力と熱意のおかげで、このフランス・ゴシック様式の大修道院は驚くほど美しく、王室と修道院の目的に合致したものとなりました」とホール氏は賛辞を述べた。
「今日、私たちはこの修道院とその教会の歴史を祝い、礼拝と記念の場としてのこの寺院の変わらぬ尊さを記念し、わが国民と英連邦および世界の中心にある信仰の故に固く立ちます」
11月の引退を間近に控えたホール氏はメッセージで、宗教学校、特にイスラム教の学校に対する政府の支援拡大を要望。支援の拡大は、人種や宗教の融和を促進するとした。
「州から財政支援を受ける学校の3分の1は、英国国教会とカトリック教会によって設立されたもので、これまで維持されてきた教育システムの中で繁栄しています。しかし、あまりにも多くのイスラム教徒の子どもたちが、資金不足の私立学校で教育を受けているのが現状です」とホール氏は続けた。
「州が財政支援している優秀なイスラム教学校を奨励する明確な義務が、政府にはあるはずです。19世紀のアイルランド移民は、新興のカトリック学校で学ぶことができました。その(アイルランド移民の)コミュニティーは、(今は)英国社会に完全に溶け込んでいます。州が財政支援しているかなりの数のイスラム教学校が、同様に社会の統合や相互関与、繁栄に寄与するはずです」
またホール氏は、宗教を時代遅れだとする「証拠は見当たらない」とも述べた。
「最後になりますが、過去1世紀以上にわたり、宗教は徐々に衰退し、時代遅れになると、多くの人が声高に予測しています。わが国も世界も、敬虔さや宗教の束縛から徐々に解かれていくと一部の人は見ています。しかし、その証拠は見当たりません」
「わが国の国民生活における英国国教会と信仰の地位は盛衰してきました。リバイバルはさまざまな形で到来します。真の明確な信仰は、伝染するように広がります。私たちは常に謙虚でありながらも、同時に確信を持っていなければなりません」
そしてホール氏は、欧州連合(EU)からの離脱をめぐる課題を抱えながらも、英国が世界への奉仕に「心を開き、寛大」であり続けることを望むと語った。
「わが国の国民生活は1066年以来、実質的な革命や侵略もなく持続されてきました。時には、痛ましいまでに試されましたが、わが国の国民生活が世界でも特異なものであることは確かです」
「それでこそ、わが英国は世界への奉仕に心を開き、寛大であり続けることができますし、そうでなければなりません。家庭だけでなく、国内において、ひいては世界において、わが国が決意を決して失わず、善き国であり、善きことを行うことを私は祈ります」
ウェストミンスター寺院は、英国議会の議事堂として用いられているウェストミンスター宮殿に隣接している。英王室の開祖であるウィリアム1世以後、英国のほとんどすべての王が同寺院で戴冠式を行うなど、英王室との関わりが非常に深い。寺院内には歴代の王・女王や政治家、著名人らが多数埋葬されており、ニュートンやダーウィン、シェイクスピアの墓もある。最近では、昨年死去した理論物理学者のスティーブン・ホーキング博士が埋葬された。
一方、ウェストミンスター宮殿の時計塔(ビックベン)で流されている同寺院のために作曲された「ウェストミンスターの鐘」は、日本では学校などで用いられているチャイムのメロディーのもとになったことでも知られている。