巨額の教会資金を流用したとして、背任罪により収監されていたシンガポールのメガチャーチ「シティー・ハーベスト・チャーチ」(CHC)のコン・ヒー主任牧師(55)が22日、2年4月の服役を終えて出所した。24日にはCHCの礼拝に参加し、謝罪するとともに、これまで支えてくれた教会員に感謝の意を示した。
シンガポール最大手のストレーツ・タイムズ紙(英語)によると、事件ではコン氏を含む計6人の教会幹部が有罪判決を受けた。コン氏らは、教会の会堂資金から2400万シンガポールドル(約18億3千万円)を、音楽制作会社「エクストロン」などへの架空の投資に回し、さらにその隠蔽(いんぺい)のために2600万シンガポールドル(約19億8千万円)を流用したとされている。
これらの資金は、エクストロン社を通して、コン氏の妻でポップ歌手でもあるスン・ホー牧師(47)の音楽活動のために使われていた。コン氏らは、エクストロン社への投資は正当なものだったと主張したが、判決は、損失が出ることを知りながら同社に投資したことは、背任罪に当たるとした。
コン氏ら6人は2015年の第1審で、禁錮1年9月~8年を命じられたが、最終的には禁錮1年6月~3年6月に減刑。コン氏が最長の禁錮3年6月で、すでに他の4人も釈放されている。一方、教会の元資金管理者であったチュウ・エン・ハン氏(58)=禁錮3年4月=は昨年2月、収監前にボートで国外へ逃亡を図ったとして逮捕された。これにより刑期が1年1月追加され、現在も服役している。シンガポールのテレビ局「CNA」(英語)によると、同国では刑期短縮制度により、刑期の3分の2程度の服役で出所する人が多いという。そのため、コン氏も2年4月の服役で釈放された。
コン氏は収監前とは打って変わり、頭全体が白髪になった姿を見せたが、CHC系列のニュースサイト(英語)には妻のコン氏と共に笑顔で登場。出所翌日の23日には55歳の誕生日を迎え、24日には出所後初めてCHCの礼拝に参加した。CNA(英語)によると、ホー氏と共に登場したコン氏はステージに上り、「起こってしまったすべてのことについて、本当に申し訳なく思っている」と謝罪。2010年5月に捜査が始まって以来、9年以上にわたって支え続けてくれた教会員に感謝の思いを伝えた。
CHCのホームページに掲載したメッセージ(英語)では、「この数年間は、私にとって、また巻き込んでしまった皆さんにとって、非常に困難で苦痛の時でした。しかし、この数年間は本当に貴重な期間でもありました。今まで以上に、神様、家族、友人、そして教会を愛し、感謝することを学びました」とコメント。「皆さんが諦めなかったことに感謝しています。教会の指導者たちと共に、この教会を建て直すため残ってくれていることに感謝します。私は永遠に皆さんに借りのある者です」と語った。
コン氏は、当面は家族との時間を優先する考えだが、「皆さんとの友情が再び始まることも楽しみにしています」と述べ、今後の教会活動に意欲を示した。
CHCは、コン氏とホー氏が1989年に創設したシンガポール最大のメガチャーチの一つ。最盛期の教会員数は約2万8千人に上ったが、事件の影響で現在は約1万6千人まで減少した。昨年集まった献金額は2900万シンガポールドル(22億1千万円)で、前年に比べ約40パーセント減っている。しかし、依然として国内の団体としては、国立大学などと並び寄付金額でトップ10に入っている。