シンガポールのメガチャーチ「シティー・ハーベスト・チャーチ(CHC)」のコン・ヒー主任牧師は、自身の妻でありミュージシャンであるサン・ホー氏の音楽活動をマネージメントしていた会社「エクストロン・プロダクション」に対し、絶対的な影響力を持っていたとされていることを、最近の公判で否定した。同国内で関心を集めるこの裁判では、コン・ヒー牧師の他、教会リーダー5人が、数十億円に及ぶ教会資金の不正運用疑惑で訴えられている。
コン・ヒー氏は、自身の名刺にエクストロン・プロダクションの「社長」と書かせたことについて、「私はこの(音楽)業界の人々と会っていましたから、私が一定の権限を持っていることを示すため、ある程度の肩書を望みました」と説明した。
しかし、当局がエクストロン・プロダクションの事務所から押収した文書によれば、コン・ヒー氏は明らかに、エクストロン・プロダクションの「隠れた社長」として任命されていると、シンガポールのストレイツ・タイムズ紙は報じた。
教会の資金2400万シンガポールドル(約19億7600万円)を不正に運用したとの疑いで、コン・ヒー氏と、投資マネジャーのチュウ・エン・ハン氏、同教会牧師のタン・イェ・ペン氏、同教会メンバーのラム・レン・ハング氏、会計担当のセリナ・ウィー・ジェック・イン氏とシャロン・タン・シャオ・ユエン氏は、有罪判決を受けた場合、10年から20年の禁固刑に処されるものとみられている。
検察側は、コン・ヒー氏が自身の名刺に「社長」という肩書を書くよう要求したことは、彼がエクストロン・プロダクションで持っていた権限が、本人が認めるものよりも大きいものである証拠となると主張。また、同教会のリーダーたちが、虚偽の債務証書を発行し、教会の資金から1300万シンガポールドル(約10億8000万円)を流用し、サン・ホー氏の米国デビューアルバムの計画資金に充てるというエクストロン・プロダクションの決定を支援していた疑いがあるとして、調査中である。
次席検事クリストファー・オング氏は、コン・ヒー氏が明らかに同教会リーダーたちとサン・ホー氏のアルバムへの融資を話し合っている内容の電子メールを公開した。
オング氏は、「エクストロンのディレクターたちは証書作成には関与しておらず、米国のプロジェクトへの最終決定をしたうちの一人はあなただったようですね」と、コン・ヒー氏に伝えた。
コン・ヒー氏は、アイディアや予算について言及していたのは電子メールの中では自分だけであったが、意思決定をする力を持っていたのはエクストロンのディレクターたちである、と主張している。
コン・ヒー氏は1989年にシティー・ハーベスト・チャーチを設立。2010年には3万3千人の教会員を持つメガチャーチまで同教会を成長させた。コン・ヒー氏は、教会の資金は誤用されておらず、サン・ホー氏の音楽キャリアはシティー・ハーベスト・チャーチが国際的に展開する重要な助けになったと主張している。
「もし、普通の教会としての垣根を越えなかったなら、私たちは数多くある地域教会の一部に過ぎなかったでしょう。『ザ・クロス・オーバー・プロジェクト(垣根を超えるプロジェクト)』は、私たちの教会員の数を2倍にも3倍にもしました」。コン・ヒー氏は以前このように法廷で語っている。皮肉なことに、彼の役割は「羊飼い」から「牧場経営者」に変化して行ったのであった。
チュウ氏をはじめとするコン・ヒー氏の以前からの友人たちは、コン・ヒー氏が「教会員たちの信仰をだましてきた」として非難し、一般音楽世界でのサン・ホー氏の成功は、ほとんど作られたものだったと主張している。