トルコで、1923年の建国以来初となるキリスト教の教会堂の建設が始まった。3日に行われた定礎式には、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が出席し、同国が信教の自由を保障していることを強調した。
AFP通信(英語)によると、建設されるのは「シリア正教聖エフレム教会」。同国最大の都市イスタンブール郊外のイェシルキョイに建設され、国内に約1万7千人いるとされるシリア人キリスト教徒が利用することになる。建設資金も、同国内のシリア人キリスト教徒のコミュニティーが拠出しており、完成は2年後の予定。
エルドアン氏は同日、イスタンブールで行われた定礎式で演説し、「この国、この国家は万人のものだ」と述べ、トルコにおいて信仰の違いは障壁にならないと語った。
「この土地の古(いにしえ)の子孫であるシリア人のために、礼拝スペースのニーズを満たすことはトルコ共和国の義務」だとエルドアン氏。「トルコに愛情を持ち、トルコに貢献し、トルコに忠誠を尽くす者は誰でも一級市民である。政治、貿易、その他の分野においても、障壁は存在しない」と続けた。
同通信によると、教会堂は、イタリア人共同墓地の敷地内にあるカトリック教会所有の土地に建設されるという。エルドアン氏が首相時代の2009年に、イスタンブール大都市自治体に、教会建設のための土地探索を命じ、10年越しで着工にこぎ着けた。
英オンラインメディア「ミドル・イースト・アイ」(MEE、英語)によると、建設は当初2015年に発表されていたが、法的な障害に阻まれ、着工が遅れていた。情報筋がMEEに語ったところによると、共同墓地は公有地であったが、カトリック教会のチャペルが建設予定地に隣接していたことで問題が複雑化した。
しかし最終的には、同国で最も大きなキリスト教派である東方正教会(コンスタンディヌーポリ総主教庁)が仲介役を果たすことになった。同総主教バルソロメオス1世が、バチカン(ローマ教皇庁)の駐アンカラ大使を通じ、ローマ教皇に建設の承諾を求めたという。
トルコは、人口の大多数がイスラム教徒だが、イスラム教が国教に定められているわけではなく、国としては世俗主義を掲げ、信教の自由を認めている。しかし、エルドアン氏の演説とは裏腹に、キリスト教徒に対する迫害も報告されている。
迫害監視団体「米国オープン・ドアーズ」は、キリスト教徒に対する迫害のひどい国をまとめた「ワールド・ウォッチ・リスト2019」(英語)で、トルコを迫害がひどい26番目の国に位置付けている。米国オープン・ドアーズは、2016年のクーデター失敗以降、同国でナショナリズムが台頭したことを非難。「エルドアン氏はこの状況を利用して権力と地位を拡大し、トルコを世俗国家からスンニ派イスラム教国へと変貌させ始め、少数派の居場所をほとんど残していない」と指摘している。
近年も、外国人キリスト教徒が投獄されたり、国外追放されたりしている。最も顕著な例では、米国人宣教師のアンドリュー・ブランソン氏がスパイ罪で投獄された。ブランソン氏は投獄される前、トルコ西部の都市イズミルの教会を20年間牧会していた。米国が、関連するトルコの閣僚2人に経済制裁を科し、追加の関税措置を発表したことで、昨年10月に解放された。ブランソン氏は帰国後、今夏初めに開催された米国際宗教自由委員会(USCIRF)で、次のように語っている。
「他のイスラム諸国に比べて、この地域では依然としてキリスト教徒にかなりの自由がありますが、私が懸念するのは、この状況がすぐにでも変化することを、あらゆる兆候が指し示していることです。多くの外国人キリスト教徒が国外追放されているのを見て、自分たちの行く末を深く憂慮している人々が、トルコの教会には大勢いると私は考えています」
同通信によると、トルコのキリスト教人口は、全人口の約0・2パーセント。