欧州連合(EU)からの離脱強硬派として知られるボリス・ジョンソン前英外相が24日、英国の新首相に就任したことを受け、同国の教会指導者らは同日、ジョンソン氏に対し公開書簡を送り、EUからの「合意なき離脱」を再考するよう要請した。
英国との離脱交渉をめぐっては、EU側は譲歩の余地はないとする立場を示している。しかし、与党・保守党の党首選を制したジョンソン氏は、23日の勝利演説で、10月31日の離脱期限までに「EU離脱を完了させる」と公言。「われわれは英国を活性化させます。10月31日にEU離脱を完了させます。あらゆる機会に乗じることで、『やればできる精神』がもたらされるでしょう」と語った。
これに対し、英国内の一部の教派の教会指導者らは、「合意なき離脱」が現実味を帯びてきたことで、公開書簡により異議申し立てをせざるを得なかったと主張。英国とEUが離脱協定を結ばないまま離脱が行われれば、「貧困に苦しむ人々が実に厳しい打撃を受けることになる」と警鐘を鳴らした。
政府に対しては、合意なき離脱が貧困層に打撃をもたらす可能性が高いことを明確にするよう要求。医薬品や食料、エネルギーなどの価格が上昇し、これらの入手が困難になるのではないかという具体的な懸念を提起した。
教会指導者らはまた、合意なく離脱した場合でも、EU加盟国が英国に協力してくれるだろうと安易に考えているのであれば、それはまるで政府が「最も貧しい市民や地域社会の基本的ニーズ」を元金に、巨大なギャンブルをするようなものだと指摘し、次のように述べた。
「多くの家庭の食卓に十分な食べ物を並べられない事態がますます高まる中、事態を悪化させると予想される方針を検討することは無責任であるとわれわれは考えます」
「合意なき離脱に対処する能力がわが国にあるとする見解には、実質的な根拠がないとしばしばいわれていることは注目に値します」
一方、EU側の離脱交渉担当者である欧州委員会のミシェル・バルニエ首席交渉官は24日、EUは合意なき離脱を望んではないと述べた。
「われわれが楽しみにしているのは、ボリス・ジョンソン新首相が望んでいるものが何であり、英国の選択がいかなるものであるかを聞くことです」
「それは秩序だったEU離脱なのか。あるいは、合意なき離脱なのか。合意なき離脱がEUの選択になることは断じてないが、われわれはそれに対する備えをしており、秩序ある離脱にも備えています。われわれは今後、数週間から数カ月間をかけて、可能な限り最善な方法で建設的な精神の下、離脱協定の批准を促進するために英政府と交渉を行っていくことになります」
公開書簡には、次の教会指導者らが署名した。
- 合同改革派教会:ナイジェル・ウーデン、デレク・エスティル両総会共同議長
- 英国メソジスト教会:バーバラ・グラソン会長、クライブ・マーシュ副会長
- スコットランド国教会:リチャード・フレイザー教会社会協議会代表
- 英国バプテスト連合:リン・グリーン総主事
- スコットランド・バプテスト連合:アラン・ドナルドソン総裁
- ウェールズ・バプテスト連合:ジュディス・モーリス総主事
- スコットランド聖公会:マーク・ストレンジ首座主教
- 救世軍:アンソニー・コッテリル英国軍国司令官
- 英国クエーカー:ポール・パーカー書記