国の文化審議会(佐藤信会長)は19日、同日開催された同審議会文化財分科会の審議・決議を受け、柴山昌彦文部科学相に対し、新たに196件の建造物を登録有形文化財に登録するよう答申した。キリスト教関係では、日本福音ルーテル熊本教会(熊本市中央区、杉本洋一牧師)が選ばれた。
答申によると、日本福音ルーテル熊本教会は、木造2階一部3階建て、切妻造り金属板葺(ぶ)きの教会堂。2階は主廊部の南側にのみ側廊が付く礼拝堂となっており、「ハンマービームトラス」と呼ばれるアーチ状の梁(はり)で屋根を支える構造により、柱のない空間が作られている。また塔や礼拝堂の開口は、尖頭アーチで統一されている。米国出身の信徒伝道者で、建築家として日本で多くの西洋建築を手掛けたウィリアム・メレル・ヴォーリズ(1880~1964)の晩年の作品の一つ。
同教会のホームページによると、米国のルーテル教会による熊本の宣教は、1898年に同教会から始まった。現在の地に教会堂が建てられたのは1905年で、戦時中の45年に焼失し、その後50年に再建された。地元では戦後復興のシンボルとなり、中央区水道町にあることから「水道町教会」の名で親しまれているという。
2016年の熊本地震では被災したが、修復が行われ、昨年、宣教120年の節目を迎えた。
今回答申された建造物には、現在最古の現役観覧車である「函館公園こどものくに空中観覧車」(北海道函館市、1950年設置・65年移設)や、草創期の都市型住宅団地として「旧赤羽台団地42号棟」他3件(東京都北区、62年建設)、先駆的なモダニズム建築の県庁舎として「島根県庁舎議事堂」他1件(島根県松江市、56年焼失・59年再建)などが選ばれた。
答申された建造物は今年秋にも正式に登録される見通しで、登録されれば、国の登録有形文化財(建造物)は1万2470件となる。