何といっても癒やされる。絵を見ているだけで、動物たちのかわいい話し声が聞こえてくるようだ。その動物たちの話はすべて、聖書の言葉を元にしているという。読みながら「あの聖句のことかな?」と考えながら読み進めるのも楽しかった。
聖書を読んだことのない人であれば、どのような気持ちで読むだろうか。絵本の最後には、動物たちの話のヒントを得た聖書の言葉がリストアップされている。これを読めば、聖書を読んだことがない人も「なるほど、こんなことが聖書に書かれているのか」と興味を持ってくれるに違いない。
「読む人の心に木漏れ日のように降り注いで、ホッと一息ついてもらえるような本でありたい」。クリスチャン絵本作家のかめおかあきこさんが、そんな願いを込めて作ったのが本作『木もれびより』(スマイルブックス)だ。筆者も読んでみて、何とも心が温かくなり、もっと多くの人にこの絵本を手に取って読んでもらいたいと思った。そこでかめおかさん本人に、絵本についての思いやこだわり、また彼女の信仰について話を伺った。
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まず『木もれびより』が生まれたいきさつを教えてください。
かめおか:出版元のスマイルブックスで店長をされている大場千恵子さんとは、『木もれびより』を出す前から、英訳本の挿絵のお仕事でご一緒していました。大場さんから「一緒に絵本を作りたい」と声を掛けていただき、「クリスチャンじゃない人にも手軽に手に取ってもらえる絵本、その上で神様のことを知ってもらうきっかけになる絵本」「1日1ページ読むというカレンダーのような絵本」というテーマで作ってほしいという依頼をいただきました。大場さんと打ち合わせをしながら、「一つ一つの話を聖書を元に作ったら、聖書にも興味を持ってもらえるかも」というアイデアが生まれ、この絵本が生まれました。
絵本作家になったきっかけを教えてください。
かめおか:子どもの頃から漫画家になりたくて絵を描いていましたが、高校生の時に漫画家ではなく、絵本作家になりたいと思うようになりました。日本を代表する童画家たちの作品をまとめた画集を眺めるのが大好きで、いつしか漫画ではなく絵本の世界に引かれていったことがきっかけでした。子どもの頃から大好きで読んでいた絵本ですが、絵本は大人が子どものために真剣に作ったものだということを、作家になってから強く感じています。子ども心に私もそれを感じ取っていたのでしょう。そのことも絵本作家になりたいと思ったきっかけなのかもしれません。
『木もれびより』の制作で苦労した点を教えてください。
かめおか:『木もれびより』には、毎日読めるよう、1カ月31日分の話がありますが、その1つ1つを考えるのがなかなか大変でした。またページ数が普通の絵本の倍近くあったので、絵の制作にも思った以上に時間がかかりました。私の場合、絵を描きながら同時に物語を考えることが多いのですが、この絵本には先に絵を描き、その後に話を考えたものも幾つかあります。また、作者の自己満足的な文章になると読者に伝わらないので、読者に伝わるような文章にすることにも気を配りました。
『木もれびより』が完成してうれしかったことを教えてください。
かめおか:どんな仕事でも形になると無条件にうれしいものですが、特にこの絵本は、スマイルブックスから「かめおかさんの作りたいように作ってください」と言っていただけたこともあり、大きな制限もなく自由に作らせていただきました。そういう意味で、自分の中でも満足のいく絵本となったことがうれしかったです。
また、スマイルブックスの皆様にいろいろと希望を聞いていただき、多大な協力をいただけたことで、一緒に作ったという思いが非常に大きい作品となりました。だからこそ、できた時にはとてもうれしく、たくさんの方に読んでいただきたいという気持ちが強くあります。何よりも編集者として携わってくださった大場さんと、応援してくださるクリスチャンの皆様と共に祈り、そこから生まれた絵本であること、これも神様の御業であると確信できる絵本となったことが大きな喜びです。
かめおかさんのキリストとの出会いを教えてください。
かめおか:私の大好きないとこたちが教会に通っており、子どもの頃からいとこの家に行くとお祈りをしてから食事をしたり、イベントがあると教会に連れて行ってもらったりしていました。そのためキリスト教に対する悪いイメージはありませんでした。しかし私の家は仏教でしたので、礼拝に参加することはありませんでした。
私は双子ですが、大人になってから姉が友人に導かれ、洗礼を受けてクリスチャンになりました。仲の良い姉から「教会に行きなさい」と何度も言われ、もともと悪いイメージのなかった私は、「そんなに言うなら行ってみるか」と、軽い気持ちで紹介された東京・練馬にある教会を訪ねました。ちょうどその日、数人の洗礼式があり、私は礼拝後帰ろうとしたのですが、教会員の方に「洗礼式をしたお祝いを一緒にしましょう」と声を掛けられました。その時「他の人の喜びを一緒に喜ぶ」ということに感銘を受けました。
また、メッセージ前のワーシップソング(賛美)がとても明るく楽しかったので、この日をきっかけに教会に通うようになりました。友達もでき、その年には洗礼を受けました。洗礼を受けたことをいとこたちはとても喜んでくれ、「あなたが救われるように15年間祈っていたよ」と言われたときは涙が出ました。思えば、いとこはことあるごとに聖句の入ったカードを送ってくれていました。その時は特に気に留めていませんでしたが、信仰の種まきはすでにされていたのです。たくさんの祈りが積まれていたと思うと、感謝でいっぱいです。
かめおかさんのクリスチャンとしての作品は他にありますか。
かめおか:私のクリスチャンとしての作品には、『ちいさなみっつのクリスマス』と『わすれものをとどけに』(共にいのちのことば社)があります。
『ちいさなみっつのクリスマス』はもともと、クリスマスのトラクトとして描いた漫画絵本を1冊にまとめたものです。動物たちがクリスマスを通してイエス様と出会い、本当のクリスマスの意味を知っていく物語です。
『わすれものをとどけに』は、旅先の親友へ忘れ物を届ける旅に出る子ブタのプーラのお話です。全世代に贈る癒やしの物語です。
最後に2月に行われる個展の情報を教えてください。
2月9日(土)から27日(水)まで、東京・銀座の教文館3階で『木もれびより』の絵本原画展を行います。オリジナルポストカードやオリジナル原画、絵本の販売も致します。作品が神様に栄光を帰し、神様のために豊かに用いられることを祈ります。神様をまだ知らない多くの魂に届くよう、クリスチャンの皆様にも用いていただければ幸いです。
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絵本『木もれびより』はスマイルブックスのホームページやアマゾン、全国のキリスト教書店で購入可能。かめおかさんのホームページはこちら。
<かめおかあきこさんプロフィール>
山形県米沢市生まれ。東北生活文化大学生活美術学科卒。ちひろ美術館・東京で学芸のアルバイトを長年務める。2000年に『ねんにいちどのおきゃくさま』(文渓堂)で絵本作家デビュー。絵本に『はるをさがしに』『なつのやくそく』『あきにであったおともだち』(文渓堂)、『どんぐりのき』『ネルとマリのたからもの』(PHP研究所)、『つばめたちのきせつ〜ビジューとフルール』(教育画劇)、『ちいさなみっつのクリスマス』『わすれのもをとどけに』(いのちのことば社)、幼年童話に『さいこうのスパイス』(PHP研究所)がある。挿絵に『村の小さな糸やさん』(日本標準)、『あしたもきっとチョウ日和』(文渓堂)、『ホテルやまのなか小学校』『ホテルやまのなか小学校の時間割』(PHP研究所)などがある。