フィリピン南部スールー州のホロ島にあるカトリック教会で27日朝、2度の爆発があり、少なくとも20人が死亡、80人以上が負傷した。同国南部では21日、新しく誕生するイスラム自治区への参加の可否を問う住民投票が行われ、多くの州で「賛成」が過半数となる中、同州では「反対」が過半数となっていた。投票結果に不満を持つ勢力が、日曜日のミサで人が集まる教会を狙った可能性がある。
フィリピンCNN(英語)によると、爆発は27日午前8時半(日本時間同9時半)ごろ、同島北部の州都ホロにあるカトリック教会「カルメル山の聖母マリア大聖堂」であった。最初の爆発は教会内部であり、2度目の爆発は教会の駐車場であった。AFP通信によると、2度目の爆発は軍が現場に駆け付けた際に発生したという。
現地の警察当局によると、この爆発により、少なくとも市民15人、兵士5人の計20人が死亡し、市民65人、兵士14人、警察官2人の計81人が負傷した。
これまでのところ、犯行グループは特定されていないが、同島にはアルカイダ系のイスラム過激派組織「アブサヤフ」の拠点があり、同州内には他の武装勢力の拠点もある。
同国南部では、政府とイスラム武装勢力の間で紛争が40年余り続いている。しかし、同国最大のイスラム反政府勢力「モロ・イスラム解放戦線」(MILF)と和平合意に至ったことで、昨年7月に「バンサモロ基本法」が成立。同法により、2022年に高度な自治を認めた「バンサモロ・ミンダナオ・イスラム自治区」(BARMM)を設立することが決まっていた。
21日の住民投票は、同自治区への参加の可否をめぐって、すでに存在する「ミンダナオ・イスラム自治区」(ARMM)に属する5州などで行われた。25日までに発表された投票結果によると、州レベルでは5州のうち同州だけで「反対」が過半数となった。ただし、今回の住民投票ではARMMは一つの地域とみなされ、他州で「賛成」が過半数を占めたことから、同州も最終的にはBARMMに加わることが決まっていた。
同国の国営放送PTV(英語)によると、サルバドル・パネロ大統領報道官は、事件を「最も強い言葉で非難する」とする声明を発表。デルフィン・ロレンザーナ国防相は事件を非難するとともに、すべての公共の場と「礼拝の場」の安全を確保するよう軍に命じた。
世界教会協議会(WCC)は同日、事件を非難する声明(英語)を発表。WCCのオラフ・フィクセ・トヴェイト総幹事は、犠牲者や遺族に哀悼の意を示すとともに、同国の政治指導者や宗教指導者に対しては、人々が命を大切にし、平和的手段によって負の傾向に立ち向かうことができるよう、支援の手を差し伸べるよう求めた。