【CJC】スカンジナビア半島やロシアのコラ半島に住む先住民、サーミ人が使用する「北部サーミ語」に聖書をあらためて訳出する計画を、フィンランド福音ルーテル教会が明らかにした。実現すれば、欧州の先住民の文化的なアイデンティティーを強化することになる、とフィンランド聖書協会も期待を掛けている。ルーテル世界連盟(LWF)の通信「ルーテル世界情報」(LWI)が15日報じた。
訳出は、ノルウェーとスウェーデンでも同時に進行される。
フィンランド福音ルーテル教会は、「フィンランド教会の典礼での使用に加えて、今回の新聖書訳出は、サーミ共同体にある教会を力づけ、霊的にも強めることになる」と指摘している。「現行の聖書を、堅信礼準備などのために使おうとしても、今日の若者にはもう理解できなくなっている」という。
サーミ人はかつて、フィンランド北部、ノルウェー、スウェーデンの大部分に居住していた。今日では多数が都市部に住んでいるが、なおかなりの人が北極圏の高緯度地方に居住している。その人たちは、自分たちの言語と文化の消滅に直面している。
「今回の訳出で使われた言語は、サーミ人の世界観に自然に納まる。それで読み手がより容易にテキストの意味を把握できるようになる。旧約聖書は共同体には特に重要」とフィンランド聖書協会は指摘する。
母語で創造物語を読むことの情動的なインパクトについて、翻訳に関するフィードバックを行うグループの1人でもあった神学者ヘルガ・ウエスト氏は、今回の作業に深く感動を受けたと言う。「以前に、若い神学者、キリスト者として、聖書をフィンランド語と英語で読んだ。それは自分のものではない文化を表している言語だった」とウエスト氏。
「今では、聖書の多くの個所を、自分自身の文化的な文脈の中から出てくる新しい方法で理解している。今になって、聖書は私にも語り掛けているのだ」と言う。
「北部サーミ語」は、1万5千人から2万5千人が話すことができ、「サーミ語」の中で最も広く話されている。