沖縄県知事選の危機、地方自治・民主主義の危機、時代の波に飲み込まれていく沖縄の危機、日本という国の危機・・・。あの地獄の戦争体験から73年の時がたち、若い世代は生れた時から基地があり、軍用機の爆音にも慣らされて、基地へのアレルギーもなくなり、国家に反抗することのメリットを見いださず、国策に従順に従う道を選び始めている。沖縄は今、内側から変えらされていく歴史の転換点を迎えているように思えてならない。
翁長知事が命を懸けて辺野古新基地NOを叫び続け、撤回宣言をして召されていった。この壮絶な命のドラマの衝撃にもかかわらず、沖縄の民の心は鈍く、翁長さんの遺志を受け継ぎ、辺野古新基地は絶対に造らせない、アジア・世界に開かれた自立と共生の誇りある沖縄を、そして貧困の家庭、子どもたちを守りぬく政治を実行しようとする素晴らしい政治家、玉城デニーさんを何としても知事にしようとする風はまだまだ弱い。翁長さんの弔い合戦といわれていたその風もまだまだ弱い。
選挙戦は静かで不気味なまでに水面下で着々と進んでいる。
相手の佐喜真(さきま)陣営は、ビラ配りは少なく、5~6千人もの運動員が本土から派遣されて隅々までもぐり込み、緻密な集票活動をして安倍政権の手足となって働いているのです。
企業ぐるみ丸かかえの集票はすさまじく、期日前投票は3日目にして那覇市は3・4倍、沖縄市は4倍と都市部で増加しています。公明党、日本維新の会の支持により既に3万票もの差をつけられているという。成功したあの「名護方式」が行われているのです。それに対して私たち一人一人の市民の良識と草の根の選挙活動は、どこまで対抗できるのでしょうか。私たちは名護市長選敗北の統括も充分できないままに敵の実態のすさまじさに対応できず、遅れを取っています。ネット上のかく乱にも対応しきれていません。恐るべき国家権力が沖縄県の地方自治を奪い、莫大な金の力をもって沖縄を買収しているのです。
期日前投票の現場では、スマートフォンで撮影して投票確認の送信までも行われているといいます。まさに現代流の選挙違反が政府挙げて公然と行われているのです。
沖縄の民衆が愛し歌っているネーネーズの歌があります。
素朴で純情な人達よ きれいな目をした人たちよ
黄金でその目を汚さないで 黄金の花はいつか散るあなたの生れたこの国に どんな花が咲きますか
神が与えた宝物 それはお金じゃないはずよ素朴で純情な人達よ 本当の花を咲かせてね
黄金で心を捨てないで 黄金の花はいつか散る
また聖書は語っています。「神と富とに仕えることはできない」(マタイ6:24)。今こそ私たち沖縄の民は、この歌を歌い、聖書の言葉に耳を傾けて目を覚ましましょう。だまされない民になりましょう。
平和のとりで、地方自治の最後のとりでなる沖縄を世界が応援しています。玉城デニーさんをこそ、知事に当選させることのできる沖縄を守りましょう。
沖縄の人々の魂は、天に帰った幾百万もの魂たちを肩に背負い、胸に抱いているのです。
「殺してはならない」 神様の命令です。
戦争につながる人殺しのためのすべての基地に反対して、私たちは闘い続けます。国家権力が決して奪うことのできない人間の尊厳を持った平和を愛する魂たちがここに生きています。何があろうとも希望を持って前進しようと語り掛ける声が聞こえます。
正義を洪水のように、恵みの業を大河のように、尽きることなく流れさせよ。(アモス5:24)
「神よ、基地の島、沖縄を憐(あわ)れんでください。平和発信の沖縄として用い祝福してください。悪を退け、真理に立たしめ、リーダー選挙に勝利を与えてください」と祈ります。
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石原艶子(いしはら・つやこ)
1942年生まれ。16歳で無教会の先生との出会いによりキリスト者となる。全寮制のキリスト信仰を土台とした愛農学園農業高校に奉職する夫を助けて24年間共に励む。1990年沖縄西表島に移住して、人間再生の場、コミュニティー西表友和村をつくり、山村留学生、心の疲れた人たちと共に暮らす。2010年後継の長男夫妻に委ね、夫の故郷、沖縄本島に移住して平和の活動に励む。無教会那覇聖書研究会に所属。