200年以上にわたり神の言葉を翻訳・出版・頒布している米国聖書協会(ABS)が、新たな就業方針を導入した。新方針は職員に伝統的なキリスト教信仰を忠実に守るよう促すもので、厳格な性倫理の要求事項もあり、一部の職員が退職したという。
新方針は、職員らに「聖書的コミュニティーの確約書」(英語)の記載事項に従うよう求めるもの。同書において職員は、聖書が神の霊感を受けた書物であることを承諾するだけでなく、「聖書の記述どおりに」キリストにある自己認識を求めるよう努めることが要求されている。
具体的には、聖書の日常的実践、地域教会への参加、「偽り、悪意のある発言、薬物乱用により自らの体を汚すこと」などの回避が含まれる。また「『人は父と母を離れてその妻と結ばれ、二人は一体となる』と聖書に規定され、それはキリストと教会の関係を象徴していると例示されているとおり(マタイ19:5、エフェソ5:31)、私(職員)は結婚外の性行為を慎むことに努める」などの項目もある。
宗教情報を扱うRNS通信(英語)によると、この新方針の導入により、ABSの職員202人のうち少なくとも9人が退職した。退職した職員の1人、ジェレミー・ギンべルさんは同性愛者で、ABSでは10年勤務してきた。RNSによると、ギンベルさんは、新しい雇用方針は特に自分のような人を排除するものだと述べている。
ABSのロイ・ピーターソン会長兼最高責任者(CEO)によると、新方針は昨年12月5日に発表され、これにより職員と理事らは「一連のキリスト教の信条と慣行」に従うことになるという。
「これは歴史的なキリスト教信仰の中心的教義によるもので、聖書が示す一連の統一的信条と価値観、および行いを裏打ちする当然の行為を明示しています」とピーターソン氏は言う。
「当協会がこのようにした理由は、職員が聖書と深く個人的な関係を持つことで、一致と透明性がもたらされるからです。そのようにして私たちは、3世紀目の働きを続けていくのです。誰もが自分自身の良心に従い、神の召しを理解して生きていかねばならないと私どもは理解しています」
一方でピーターソン氏は、これらの事柄についてはさまざまな見解があることは認識している。その上で、クリスチャンが「異議を唱えるにしても、敬意と礼儀、そして愛をもってそうする」ことを期待すると語った。
「もし職員がこの確約書に同意せず、それ故他の所で働くことを選ぶなら、私どもはその決断を支持し、敬意と思い遣りをもってその職員の転職に対処します」
職員が新方針を承諾するまでには、1年の猶予が置かれている。ピーターソン氏は、この方針が聖書頒布の使命に影響することはないとの見通しを強調した。
「確かなのは、ABSが職員と共に聖書理解を明確化しようとしていることです。また、これらの価値基準に対する是非とは別に、私たちは聖書を必要とするあらゆる人に聖書を届けることに献身しています。今回の決定は聖書への従順を強めること以外のいかなる目的も意図されておらず、そのような主張をなすものでもありません」
ABSは1816年にニューヨークで設立され、現在はフィラデルフィアのインディペンデンス国立歴史公園横に本部を置き、米国内のみならず世界各地に聖書を頒布している。出版する主な聖書は、現代英語訳聖書の「Good News Bible(GNB)」(別称:Good News Translation=GNT、Today's English Version=TEV)や「Contemporary English Version」(CEV)。日本聖書協会は、ABS、英国聖書協会、スコットランド聖書協会の各日本支社がその前身となっている。