長崎、熊本両県にある12資産で構成される「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録される見通しとなった。ユネスコの世界遺産委員会の諮問機関である国際記念物遺跡会議(イコモス)が登録を勧告した。6月末から始まる同委で正式に決定すれば、国内18件目の世界文化遺産となる。
文化庁は4日、イコモスが潜伏キリシタン関連遺産の世界文化遺産登録を推す評価結果を出したことを、世界遺産センターから通知されたと発表した。イコモスによる評価結果は、登録を促す「記載」、追加情報提出後に再審議する「情報照会」、推薦書の再提出を求める「記載延期」、登録に相応しくないとする「不記載」の4段階。潜伏キリシタン関連遺産は「記載」の勧告を受けた。
12の構成資産には、国宝の「大浦天主堂」(長崎市)や、島原の乱で一揆軍が籠城した「原城跡」(南島原市)などが含まれる。イコモスは「禁教期にもかかわらず、ひそかに信仰を継続した長崎と天草地方における潜伏キリシタンの独特の文化的伝統の証拠」と評価。構成資産の範囲が適切で、保存状態も良好だとし、国内法令に基づいた保護措置も十分だとした。
当初は「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」として登録を目指し、2007年には世界文化遺産の暫定一覧にも記載されていた。16年の登録を目標に準備を進めてきたが、イコモスから内容の見直しを指摘されたことで、一度推薦を取り下げて構成資産などを再検討。禁教期に焦点を絞り、名称も現在のものに改称して昨年、再度推薦書を提出していた。
日本では「法隆寺地域の仏教建造物」(奈良県)と「姫路城」(兵庫県)が1993年に初めて世界文化遺産に登録された。潜伏キリシタン関連遺産が正式に登録されれば、13年の「富士山」以降6年連続の登録となる。また日本では世界自然遺産として4件が登録されており、文化・自然遺産を合わせると、国内22件目の世界遺産となる。
登録の可否が最終的に決まる第42回世界遺産委員会は、6月24日から7月4日まで中東のバーレーンで開催される。
「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産は下記の通り。
- 原城跡(長崎県南島原市)
- 平戸の聖地と集落(春日集落と安満岳〔やすまんだけ〕)(同平戸市)
- 平戸の聖地と集落(中江ノ島)(同)
- 天草の﨑津集落(熊本県天草市)
- 外海(そとめ)の出津(しつ)集落(長崎県長崎市)
- 外海の大野集落(同)
- 黒島の集落(同佐世保市)
- 野崎島の集落跡(同小値賀町)
- 頭ヶ島(かしらがしま)の集落(同新上五島町)
- 久賀島(ひさかじま)の集落(同五島市)
- 奈留島(なるしま)の江上集落(江上天主堂とその周辺)(同)
- 大浦天主堂(長崎市)
1)潜伏キリシタンの文化的伝統が形成される契機となる出来事が考古学的に明らかにされている「原城跡」、2)潜伏キリシタンがひそかに信仰を維持するためにさまざまな形態で他の宗教と共生を行った集落(「平戸の聖地と集落」「天草の﨑津集落」「外海の出津集落」「外海の大野集落」)、3)信仰組織を維持するために移住を行った離島部の集落(「黒島の集落」「野崎島の集落跡」「頭ヶ島の集落」「久賀島の集落」「奈留島の江上集落」)、4)潜伏キリシタンの伝統が終焉(しゅうえん)を迎える契機となった「信徒発見」の現場であり、各地の潜伏キリシタン集落と関わった「大浦天主堂」で構成される。