「情報と福音」をテーマにした集会が2月9日、沖縄キリスト教学院シャローム会館(沖縄県西原町)で開催された。主催は日本福音キリスト教会連合(JECA)石川福音教会(同県うるま市)で、講師はクリスチャントデイ論説主幹の宮村武夫牧師。「ネット社会と私の福音伝道」を副題に、参加者は講演を聞きながら、インターネット社会における福音伝道の在り方についてあらためて考えを分かち合った。
集会は「インターネットを活用した伝道方法」を学ぶものではなく、「顔と顔とを合わせ、人格を通して福音を伝えること」と、「インターネットを駆使して『コピーされた福音』を伝えること」の本質的な違いを、講師の発題を元に共に考えていく内容だった。参加者8人の小さな集会だったが、石川福音教会の重元清牧師は「大切な一歩を踏み出す集会だったのではないでしょうか」と話す。
顔と顔とを合わせて行う福音伝道から、「コピーされた福音」を広く伝える伝道にシフトしたのは、500年余りも前のこと。マルティン・ルターは、新しく誕生したヨハネス・グーテンベルグによる印刷技術を用いて、ドイツ語訳聖書を民衆に普及させた。この時すでに、福音伝道の方法に大きな変化が起こっていた。しかし、ルターが印刷技術を積極的に用いた背後には、権威主義に傾いていた当時のカトリック教会との戦いがあった。では現在、インターネットの普及により起こっている爆発的な「コピーされた福音」を使った伝道は、どこに向かっているのか。何と戦っているのか。大きな時代変化のただ中に生きているわれわれは、まだ客観的に判断できないのではないのか。
重元牧師によると、沖縄県には現在300近い教会があるが、その中の無牧となっている教会では、コンピューターの映像を用いて「説教」を聞き、礼拝を守るところが増えてきているという。重元牧師はこうした現象について、「権威主義に傾く牧師の姿を解体しつつある一面があるかもしれない」と語った。
宮村牧師はまた、時と場所に応じてコミュニケーションの方法を使い分けていると語った。1つ目は、顔と顔とを合わせて直接語り合うこと。2つ目は、電話をかけて直接話すこと。3つ目は、自筆の手紙を書くこと。そして、パソコンとインターネットを利用してメールやブログなどで一斉に情報を発信すること。「どこに向かっているのかよく分からないインターネット時代の中で、私たちの取るべき態度は、宮村牧師のように時と場所に応じて適切な方法を用いるということに要約できるのではないでしょうか」と重元牧師は言う。
ルターの時代には、時と場所を越える普遍性を持つために、印刷物は細心の注意が払われて作成された。事実、グーテンベルグが印刷した聖書の文字の美しさは芸術的なほどに洗練されている。しかし現在、インターネットの中で行われている「コピー」は、あまりにも安易なコピーであり、信頼すべき情報なのか、うその情報なのか、分からない世界を生み出している。顔と顔とを合わせることもなく、電話で直接話すこともなく、また手紙を書くこともなく、インターネット上の情報が自由に切り貼りされ、それがまた大量に流されて行く。重元牧師は集会を終えて、次のように感想を語った。
「今回の集会では、このインターネット時代に『信頼』の大切さがあらためて確認されました。またその一方で、本当の『信頼』がどこから来るのか分からないまま、多くの情報に振り回されている私たちの姿についても確認する時となりました」