本書は、エキュメニカルに幅広い読者をもっている注目の神学者アリスター・マクグラスが、二〇〇三年五月に来日した際に行った全講義の翻訳である。
第?部は、宗教改革の思想をはじめとする歴史上の様々な思想に言及しながら、現代社会においてキリスト教の果たすべき役割を論じている。ポスト・モダニティは、合理的画一主義の否定、物語の重視、イメージの強調、地域共同体の重視といった特徴をもっている。これらは近代社会が生み出した問題があらわになりつつあるこの時代の要求であるが、キリスト教がこれらの要求にいかに応えることのできるかを明快に述べている。
第?部では、「現代キリスト教における自然神学の位置」「科学と宗教」を扱っている。かつて自然科学者であった著者自身の経験を語りながら、この問題に対する様々な立場の見解を述べ、今後の可能性を探っている。
第?部では、「心と頭で神を愛する―神学と霊性との関係」およびチャペル・レクチャーを収録している。前者においては、今日の神学が知識のレベルにとどまっていることを指摘し、霊性の重要性を述べている。チャペル・レクチャーでは、ヨハネの福音書中の「わたしは〜である」という三つの表現について恵み深い解説を行っている。
本書にはすでに邦訳されている著書の要約的紹介のみならず、最新刊『科学的神学』の執筆背景が語られている。歴史的キリスト教に深く根ざしつつ、二一世紀のキリスト教のあるべき方向性を示す、マクグラスの思想への格好の入門書。