毎年10月16日は、FAO(国際連合食糧農業機関)が定めた「世界食料デー」。この日を覚えるため、日本国際飢餓対策機構(JIFH)は、キリスト教精神に基づいた慈善団体「Everlasting LOVE Project」と共催し、23日、「東京フードデー・クロス・ゴスペル(Tokyo World Food Day + Gospel)」をお茶の水クリスチャン・センター(東京都千代田区)8階チャペルで開催した。
ゴスペルコンサートを前に、会場前のホールでは各協力団体がブースを出展。グッズや音楽CDの販売などを行った。
コンサートに参加したのは、spLinkLer(スプリンクラー)、Schanita(シャニータ)、Vincento(ヴィンセント)、Melissa Watanabe(メリッサ・ワタナベ)、白鞘慧海(しらさや・えみ)の5組に、昭和音楽大学などのゴスペルクワイアも加わった。
同イベントの今年のテーマは、「わたしから始める、世界が変わる。考えてみよう、共に生きること」。世界の「食」の問題について一人一人が知り、考え、実践するきっかけを作るこのイベント。参加者は、小さな子どもから年配者まで幅広く、関心の高さがうかがえた。
ライブの中でJIFHの福地麻美さんが講演を行った。
2週間ほど前、世界の飢餓人口に関する最新のデータが国連から発表された。それによると、全世界人口約73億人中、飢餓に苦しんでいる人々は約8億1500万人。この数字は、昨年よりも増加しているという。
一方で、日本でも社会問題になりつつある「肥満」は、世界で約6億4100万人。これは、BMI(体格指数)が30以上の人数だが、「過体重」といわれるBMI25以上は、実に約21億人の人々が当てはまる。世界の3分の1の人が過体重、もしくは肥満ということになる。
食品ロスも深刻な問題だ。まだ食べられるのに捨ててしまう食品のことを「食品ロス」と表現する。日本国内を見ると、年間約632万トンが食品ロスとされ、これは国民一人一人が毎日ご飯茶わん1杯の食料を捨てているのと同じ量になる。食品ロスの約半分は、家庭から出たものだという。
「もしかしたら、日本だけでも食品ロスを減らして、食料のない国に分けてあげることができたら、世界の飢餓はもっと減るのではないでしょうか。日本のように、食べ物がたくさんあって、肥満が社会問題になったり、安易に食べ物を捨てて食品ロスが起きたりする国がある一方で、世界には、おなかを満たすために石を口に入れて、将来の希望を見いだすこともできずに、日々必死に生きている子どももいるのです」と福地さんは訴える。
紛争地では、あまりにも危険すぎるため、食料を現地に届けることができない。このため、食料自給率の低い国では瞬く間に飢餓が起こり、多くの人が犠牲になっていくのだ。日本も例外ではない。現在、日本の食料自給率は40パーセントを切っている。東京に関していえば、わずか1パーセントにすぎない。万一、東京で紛争が起こり、食べ物が入ってこなくなれば、飢餓に陥るのに時間はかからないだろう。
飢餓の大きな原因の1つに、気候変動がある。これは、ただ自然が起こす変化だけではない。森林の伐採、自動車の排ガスやその他さまざまな理由で排出される二酸化炭素の増加など、人間が起こす行動によっても気候変動はもたらされるのだ。
不平等や搾取も大きな問題だ。先進国が必要以上の物や食糧を確保しているため、世界の中で食糧過多が起きる国もあれば、飢餓に苦しむ国も存在してしまうのだ。
「このような問題を突き詰めていくと、飢餓の問題や原因というのは結局、『人』ではないでしょうか。自分さえよければいい、自分の大切な人さえよければいい・・・私たち一人一人がそのように考える時、世界のバランスはアンバランスになってしまいます。石を食べていた子どもたちは、『貧しい国に生まれてかわいそうだね。運が悪かったね』と同情されるために生まれてきたのではないのです。私たちと同じように人間としての尊厳を持って生まれてきた人たちです。彼らもその尊厳が守られ、共に生きていかなくてはなりません。豊かな国日本にいて、自分は何をしたらよいか分からないという人に伝えたいのは、誰にでもできるサポートは祈りだということです。祈りは必ず聞かれます。そして、祈りによって愛が生まれるのです。世界中で飢餓に苦しんでいる子どもたちのために祈りましょう」
世界食料デーのイベントは、10月、11月を通して全国各地で行われる。詳しくはホームページを。