毎年10月16日は国連が制定した「世界食料デー」だ。世界に広がる栄養不良、飢餓、極度の貧困を解決することを目的に、1979年の国連食糧農業機関(FAO)総会の決議に基づき、1981年から制定された。キリスト教精神に基づく非営利国際協力団体である日本国際飢餓対策機構(JIFH)は今年、「2014世界食料デー大会」として、9月末から全国21カ所を巡りイベントを開催している。11月2日には、千葉県柏市にある沼南キリスト教会を会場に講演会を開催した。
この日、講演を行ったのは、南米ボリビアに8年前から駐在し、現在もボリビアで支援活動を行っている小西小百合さんと田村治郎総主事。ボリビアはスペイン語圏とされながらも36の言語のある多言語国家。南米の最貧国でもあり、乳幼児の死亡率も最悪の状態だ。その原因の一つが、5歳以下の乳幼児の慢性的な栄養不足である。ボリビアの飢餓対策機構では、「2020年までに慢性的な栄養不足の解消」を目標としている。
ボリビアの山岳部、富士山よりも標高の高い地域では、朝4時に起きて、羊飼いのような仕事をするのはまだ幼い子どもたち。そのほとんどは、学校に行くことができないほど貧しい。特に女の子は、学校に行くよりも家の手伝いなどをすることが多い。彼らの主食はジャガイモ。現地事務所では、支援の一環として、家庭菜園や学校菜園の推進も行っている。また、都市部以外の地域では、子どもの命が軽視される傾向があるという。売ることのできる家畜と自分の子どもが同時に病にかかったとき、たいていの両親が家畜の命を優先させるという。
同団体の活動の一つ、チャイルドサポーター(世界里親会)制度を通して、ボリビアでは、344人の子どもを教会、医療機関、学校が協力して支援している。1人の子どもを、個人または団体で、月々4000円の募金でサポートするという世界里親会。教会学校単位、また高校生が友達数人で1人の子どもをサポートするケースもあるという。
大阪の高校生がサポートしているという男の子は、サポートにより学校にも通い、現在はスタッフとして活躍中。「このように、みなさんの支援によって、1人の子どもの人生が変わります。1人の子どもの人生が変われば、その家族の人生が変わります。家族が変わると、その地域も変わります。私たちは、このような活動を続けることによって、ボリビア全体、世界全体が変わるのではないかと思っています」と小西さんは話した。
現在もなおボリビア国内だけで140人の子どもたちが世界からの支援を待っている。里親になると、子どもたちと手紙を通した交流が始まる。「この手紙を子どもたちはとても楽しみにしています」と小西さんは話す。講演後、本紙のインタビューに応え、「ボリビアの人たちは、とにかくのんびりしている。他の南米の国がそうであるように、時間がゆっくりと流れている感じですね。現地の教会では、礼拝の開始が遅れることもしばしば。山岳部では、プロテスタント人口は決して多くはないが、十数人のメンバーで礼拝を守っている所もある」と話した。
小西さんの次に登壇したのは、田村総主事。「世界では、7人に1人が飢餓に苦しんでいる。その原因はなぜだろうか?」と問い掛けた。作物ができないような天候、戦争や内紛などによる貧困などが思いつくが、「原因はそれだけではないのではないか」と田村総主事。りんごの絵を5つ画面に映し出し、「この5つのりんごを世界の5人の子どもに分けるとします。1人は日本やアメリカなどの先進国の子ども。あとの4人は飢餓に苦しむ国の子どもたちです。みなさんなら、どのように分けますか?」と話すと、会場からは「当然、みんなに1つずつでしょう」と声が上がった。
田村総主事は、「そうですね。本来なら、そうすべきなのですが、現状は、5つのりんごのうち、先進国の子どもが4つを食べ、残りの1つを4人の子どもが少しずつ分け合って食べている状況なのです。飢餓の原因は、食料が絶対的に不足しているとか、戦争によるものとかではなく、この『富の独占』が大きな原因なのではないでしょうか」と話した。
「富の独占」は、天の神が喜ぶべき姿だろうか。「『平和をつくる者は幸いです。その人たちは神の子どもと呼ばれるから』(マタイ5:9)と聖書にも書いてあります。私たちは、富の独占をするのではなく、神様から頂いたものを皆と分けあうことが必要なのではないか。『里親会』のような制度を利用して、支援をいただくのも一つ。まずは、こうした大会に出席いただいて、意識を持っていただくのも『平和をつくる』一歩なのでは」と語った。