東京キリスト神学校で新約神学の授業を担当していた時期、新約神学への異なる切り口の代表的な著作幾冊かの対比を提示。その背景の中で、G.L.Ladd 著 A Theology of the New Testament の講読を中心に、私たちが手にする新約聖書の構造を、そのまま自らの新約神学理解の構造とする、一見素朴に見えるラッド先生の著作の深さと豊かさ、そうです、新約聖書の多様性と統一性の両面を視野に入れることのできる視点の利点を強調してきました。ある時期、くる年もくる年も。
共立基督教研究所で研鑽(けんさん)をなさっていた方も、その授業をとられました。つい最近、そのお1人が現在なおラッド先生について学びを深め、今後その成果を発表予定との報告を拝見、うれしく励まされました。
ラッド先生は、私と約30年の年齢差があります。ゴードン(先生はゴードンカッレジ、Divinity School 両方)からハーバートへ進んだ一群の新約学徒の一員で、カナダ生まれです。
1961年夏、軽井沢で開講された黙示録集中講義で、ホイートン大学のテニー先生は参加した私たち一同に、著作を通してでなく、直接人格的に深い感銘を与えられたのです。あのテニー先生が、私が知る限り、ゴードンからハーバートへ進む新約学徒の先達でした。
私自身もゴードンで驚きをもって学んだ、W・レイン先生。ゴードンからウエストミンスターに進み、ストーンハウス先生のもとで指導を受けた後、先生もハーバートへ進みました。
ゴードンとハーバートで2年先輩のショラー先生は、後年ラッド先生と同様フラーの新約教授、しかも末期がんの身をもって聖書のメッセージを伝え切ったのです。私は若き日のショラー先生の励ましと支えを受け、1年間で ThM コースを終えることができました。ショラー先生は、ホイートンでテニー先生のもとで学び、ゴードンでは上級生として、すでに下級生の初級ギリシャ語コースを担当していました。
小さな1つの流れのようにハーバートへ進む新約神学の学徒が、現在とは比較にならない小規模な神学教育機関ゴードンから起こされ、聖書そのものを愛する態度と知識で、評価を受けていたのです。
私も、その歴史の流れの末端にいる立場を自覚しています。
特にソルボンヌを卒業、ゴードンでテニー先生にギリシャ語を学び、ハーバートで組織神学・教理史の分野で学位を取られた、スイス人の恩師ニコール先生の指導を、先生が90歳を越え、愛する主のもとに召されるまで受け続けた恵みを、今も心から感謝しています。
受けた恵みへの応答を、神学教育の現場において次の世代へ伝えたあの当時の恵み、さらに現在クリスチャントゥデイを通して、世俗のただ中に生き戦う方々へ、キリストの僕(しもべ)仲間(黙示録22:8、9)である記者やコメンテイターの諸兄姉と広く伝え得る事実を、二重、三重の恵みと覚えています、感謝。
ただ1つ、ラッド先生の大切な大書に、私なりに留保がありました。それは、G・ヴォスの占める位置が、ラッド先生ご自身が認める以上に、深く広いのではないかとの受け止めです。
1971年3月、上智大学大学院神学修士の学位を授与されるまで数年間、ペテロ・ネメシェギ先生から個人的・集中的ご指導を受けたのは、文字通り主にある恵みです。
受けた恵みの1つは、G・ヴォスの聖書神学の源流と呼びたい、エイレナイオスとの出会いです。私が背負う制約の中で、エイレナイオスの持つ聖書全体を有機的に見る解釈方法の重要性を把握、提示し続け、後進の本格的研究を期待したいのです。
上智卒業後も、年月やハンガリーや沖縄との距離的隔たりを越えて、ネメシェギ先生との文通を通して、主にある交わりは続けられたばかりでなく、深められました。
特に、2011年5月、25年振りに沖縄から本土に戻り、2013年には、思いを越えて10月25日に卒業以来のネメシェギ先生との再会と講演会出席。続いて10月30日に2度目の講演会出席。
そうした恵みの中で、写真にある2013年10月8日付のお便りを頂いたのです。
主の平和
先生のりっぱな本を送って下さって、ありがとうございました。
そして、私のことも書いてあって、びっくりしました。
先生は、今度、本土に帰って、イエスの福音を伝えています、ね。
神の恵みに助けられるように祈っています。
私もう90才になってしまいました。そろそろ、おん父にもどる時が来たと感じています。
天国で会いましょう。祈っています。ペテロ・ネメシェギ
2013. 10. 08
2017年3月、3年間のクリスチャントゥデイの編集長の働きを卒業、4月から最適の後任、雜賀信行編集長に委ねることができ、感謝しています。1971年の卒業から46年後のもう1つの卒業です。
そして今、論説主幹として新たに、ネメシェギ先生が励ましてくださる「イエスの福音を伝え」る歩みの継続と覚悟しています。そうです、2013年10月8日付、ペテロ・ネメシェギ先生のさすがに90歳のお年を感じさせる字体の便りは、時に応じて新たな意味を加えて、現在の恵みとして伝わってきます、感謝。
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