「不法がはびこるので、多くの人たちの愛は冷たくなります。しかし、最後まで耐え忍ぶ者は救われます」(マタイ24:12、13)
最近、「老後破綻」という言葉がニュースの中に度々出てきます。定年退職で仕事もなく、年金も微々たるものでしかないという状況では、生活していくことも困難になります。しかし、長い人生の中で、神様は、その人にしかない宝物を委ねていらっしゃると思います。その宝物を掘り出し、生かしていくことが高年齢者に課せられた使命だと思います。
NHKの朝ドラ「ひよっこ」の中で、主人公の叔父さんが自分の戦時体験を告白します。「インパール作戦で敵兵と遭遇したとき、体が硬直して何もできなかった。相手も自分と年の変わらない若者だった。最後に相手の兵士は笑い、自分から離れて行った。自分は笑えなかった。戦後、どんな時でも、笑っていこうと心に決めた」。その叔父さんはいつも笑っていて、親戚のムードメーカーだったのです。このような人が1人存在するだけで明るくなります。
カーネル・サンダースといえば、ケンタッキー・フライド・チキンの創業者として有名です。彼は6歳の時に父親を病気で失い、母親が工場で働いていたため、家族のために料理を作っていました。10歳で農場に働きに行ってから、40種類の仕事を経験したといわれます。
30代後半で初めて起業し、ガソリンスタンドを始めます。埃にまみれた車の窓をきれいにし、ラジエターの水をチェックするというサービスで客も増えていきます。ある時、お客さんのアドバイスで、6席だけの小さな「サンダース・カフェ」を併設します。
当時の世界大恐慌と近くにバイパスができたということでガソリンスタンドは倒産しますが、レストランは残ります。やがて140席以上のレストランに成長しますが、火事で焼けてしまいます。何とか再建しますが、莫大(ばくだい)な負債を抱えてしまいます。
65歳になったとき、レストランを他の人に譲り、負債はなくなりますが、無一文になります。年金をあてにしようと思って、年金通知書を見たら、月1万数千円という金額に愕然(がくぜん)とし、とても生きていけないと思い、首をくくろうとします。死ぬ前に自分には何か残っていないかよく考えようと思ったら、カフェで好評だったフライドチキンのレシピがあることを思い出します。
フライドチキンのレシピを教える代わりに、売れたチキン1個に付き5セント受け取れるというフランチャイズビジネスを考えました。車で寝泊まりしながら全米で売り込みますが、最初は断られます。実に、1009回「No!」が付きつけられます。しかし、73歳になったときには、契約店が600店舗になっていました。
神様がサンダースに委ねられた宝物は1枚のレシピでしたが、それをもとにして73歳で成功できたのです。
今から30年ほど前ですが、アメリカのロサンゼルスを訪ねました。その時、滞在していたのがビジネスホテルだったのですが、オーナーは韓国人でした。いきさつは忘れましたが、このオーナーと親しくなり、いろいろと話す機会がありました。
このオーナーが言うには「自分は韓国人ですが、日本人に学びたいと思っています。韓国人は同族意識が強くて、1カ所に固まりたがります。店の看板も英語だけでなく、ハングル文字も入れたがります。自分たちの主義主張が強いので一時的には目立ちますが、反感を買ってしまいます。日系人はその国に溶け込んで目立ちません。あまり、主義主張もしません。しかし、長続きします。どんな国に行っても日系人だったら対応していきます。世界宣教を考えるときにも、日系人の働きのほうが有効です」。
日本人は押しの弱さで損をしているように言われることが多いのですが、世界融和には日本的なやり方が生きてきます。日本の商社マン、宣教師、技術者が世界各地で活躍していますが、悪い評価は聞いたことがありません。日本人としての特性も神様から委ねられた宝物の1つかもしれないと思います。
自分の人生は平凡で、大したことはできなかったように思えても、神様から委ねられた使命があることを信じて、残された人生を喜びのうちに生きていきたいと思います。
主なる神が私の人生で示してくださった奇跡のストーリーを分かち合っていけたらと願っています。
「神が私たちの味方であるなら、だれが私たちに敵対できるでしょう。私たちすべてのために、ご自分の御子をさえ惜しまずに死に渡された方が、どうして、御子といっしょにすべてのものを、私たちに恵んでくださらないことがありましょう」(ローマ8:31、32)
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