オーストリア議会は、過激派組織「イスラム国」(IS)により、イラクとシリアでキリスト教徒が虐殺されていることを公式に認め、被害者へ対する支援計画を決めた。
20日に発表された米国法律正義センター(ACLJ)の報告(英語)によると、オーストリア国民議会(下院、日本の衆議院に相当)は今月7日、ISがキリスト教徒や他の宗教的少数派に対して「凶悪な残虐行為」を行っていることを公式に認め、ACLJが求めていた7項目の被害者救済計画のうち、少なくとも3項目を実施することを決議した。
ACLJは、「オーストリアは明確な立場を表明する最初の国の1つとなった」とし、キリスト教徒を救済する保守派による一連の取り組みにおいて、同国は「大きな一歩を踏み出した」としている。
ACLJは昨年、ウェブサイト(英語)でこの「7項目計画」について詳細な内容を発表し、ISによる大虐殺(ジェノサイド)との戦いに加わるよう国連加盟国に呼び掛けていた。
7項目計画は、被害者らが過激なテロ組織による大虐殺から逃れられるよう、国内に「安全地帯」を設置することや、IS討伐の国際的連携に加わり軍事努力を拡大することなどを求めている。
ACLJは、「被害者に必要不可欠な救済措置を実施するには、国連や国際社会に圧力をかけ続けることが必須だ」とし、「キリスト教徒を聖戦主義者の大虐殺から守る世界最大の法的支援活動」を推進しているというACLJの大義に加わるよう呼び掛けている。
国連へ送った書簡の中でACLJは、ISと戦うに当たり、協力の喫緊性を訴えている。
ACLJは、「シリアではISが、(イスラム教に対する)冒とくや異端的な教え、背教などの理由で、男性や女性、子どもたちまで斬首されたり、石打ちされたりしている。あるキリスト教徒のシリア人女性によると、『キリスト教徒たちは殺され、拷問され、子どもたちが両親の前で斬首されている』」と報告している。
また、アッシリア人キリスト教徒が集団誘拐されている情報もあるという。大人も子どもも、キリストへの信仰を捨てることを拒否したために拷問を受け、女の子たちの一部はテロリストらにレイプされたり、焼き殺されたりしている。
3つのキリスト教団体(オープン・ドアーズ、サーブド、中東コンサーン)が共同して作成した調査報告書(英語)によると、2011年以降、シリアとイラクのキリスト教徒は、少なくとも5割、多ければ8割が国外に避難している。
報告書は、「国外避難の要因には紛争による暴力がある。イラク北部のニネベ平原では、歴史的なキリスト教の町の幾つかがほぼ壊滅状態となり、移住や地域社会の喪失、インフレ率、雇用機会の喪失、教育機会の欠如などが要因として挙げられる」と指摘。「イラクとシリアでは、ISの活動などの直接的暴力が国外脱出のきっかけとなったが、母国を離れる最終的な判断は、長年にわたって蓄積してきた要因によるとされている」と分析している。