世界の武力衝突をまとめた国際的なデータベース「ACLED」と、アフリカ戦略研究センター(ACSS)の分析によると、ソマリアを拠点とするイスラム過激派組織「アルシャバブ」は今や、ナイジェリアを拠点とするイスラム過激派組織「ボコ・ハラム」よりも危険だとされ、アフリカで最も恐れられるテロ集団となっている。
米ネットメディア「クオーツ」(英語)によると、ボコ・ハラムは2014年まではアフリカで最も恐れられるテロ集団だったが、アルシャバブが16年に4千人以上を殺害したことで、ボコ・ハラム以上に恐れられる存在になった。
ソマリア政府の転覆を目指すアルカイダ系のイスラム武装組織であるアルシャバブは、15年4月には、ケニア北部のガリッサにあるガリッサ大学のキリスト教徒の学生約150人を殺害。さらに、ソマリア周辺のホテルや公園、海浜レストランのほか、大統領府、議会、最高裁までも襲撃している。
アルシャバブが脅威を増しているのは、ボコ・ハラムが衰退しつつあるのに呼応しているとみられる。ここ数カ月、ナイジェリア軍はボコ・ハラムが支配している大部分の地域を奪回した。
しかし、10年から16年までの犠牲者数からみると、アルシャバブが1万8070人を殺害したのに対し、ボコ・ハラムは2万9360人でそれを上回っている。
アルシャバブは16年1月、当時米共和党の大統領選先行馬だったドナルド・トランプ氏(現大統領)が、イスラム教徒の入国を禁止する発言をしたことを取り上げ、米国内から新しい戦闘員を募り、黒人の若者をイスラム教徒に改宗させようとする動画を公開していた。
この約1時間の動画の最初に見せたのは、米国出身のアルカイダ幹部で、11年に米国の無人機によって殺されたアンワル・アウラキ氏の警告だった。米サウスカロライナ洲の決起大会で、イスラム教徒の全面入国規制を唱えたトランプ氏を取り上げ、その後にアウラキ氏が登場。「結局、西欧諸国はイスラム教徒に敵対することになる。ゆっくりと、しかし確実に、西欧社会の状況は(1492年にスペインがイスラム教の拠点である)グラナダを陥落させた後の、苦悩するイスラム教陣営の状況に近づいている」と語った。
イエメン、ソマリア、パキスタンの情勢を扱う総合サイト「クリティカル・スレット」(英語)は4月、アルシャバブが民衆の支持を得ながら、ソマリアの政治的支配と規制を強めようとしていると警告した。
クリティカル・スレットは、「アルシャバブは、ソマリアの田舎に住む無防備な人たちをターゲットにする戦略として、人道支援を妨害し、破壊的な干ばつと迫りくる飢饉(ききん)を利用しようとしている。彼らは、何百万人もの人々の人道的必要を担えない、首都モガディシュの脆弱(ぜいじゃく)な中央政府の能力的弱点を突こうとしているのだ。食料不足に対処しようとする国際的な人道主義的応答の不足が、危機感をつのらせ、アルシャハブに好機を与えている」と伝えている。