ルーテル教会の若手牧師4人で結成された牧師ROCKSが今月、結成から4周年を迎えた。これを記念して18日、ライブハウス「四ツ谷アウトブレイク」(東京都新宿区)でライブを行った。
多くのメディアにも取り上げられ、話題の多い牧師ROCKSだが、4人の赴任地は東京、埼玉、山梨、熊本と全国に散らばっている。牧会で多忙なため、4人がそろってライブをすることはおろか、練習することさえ難しく、熊本からギターボーカルの関満能(みつちか)牧師(日本福音ルーテル水俣教会・八代教会)牧師も加わるフルメンバーでの演奏が見られるのは年に数回。「急きょ、教会の信徒に何かあった場合は、牧師として駆け付けるのは当然。ライブやバンド活動と天秤(てんびん)にはかけられない」と4人は口をそろえる。
18日のライブは、平日の夜にもかかわらず、多くの人でにぎわい、熱気に包まれた。この日に合わせて、新曲「BLESS YOU」「Hey Lee」と、過去にリリースされた人気の7曲を演奏し、会場を大いに盛り上げた。
4周年を迎え、ギターボーカルの笠原光見(こうけん)牧師(日本ルーテル教団浦和ルーテル教会)はこう話した。
「何とか4周年を迎えることができた。ライブハウスに足を運んでくれる方々が楽しいと思ってもらえるライブができれば、それで十分だと思っている。教会とは関係のない方々も、単純に音楽を楽しみに来てくれている。もしかしたら、彼らにとって人生で出会う初めての牧師が僕らかもしれない。『こんな変な牧師もいるんだな』と、少しでも教会や牧師に興味を持ってくれれば、なおうれしい」
実際に「牧師ROCKSのギタリストを見に行こう」と教会の礼拝を訪れるファンもいるが、ギタリストとしての姿と教会での姿があまりにも違っているので驚く人も多いのだという。
19日から日本福音ルーテル東京教会で行われている「ステファン・ミニストリー」の講演のため来日中のケネス・バーグ氏も、娘のアミティー・バーグ氏らと共にライブハウスを訪れ、牧師ROCKSの音楽を楽しんだ。バーグ氏は言う。
「牧師がこのようなロックコンサートをしているのは、米国でも見たことがない。もちろん、ワーシップバンドやゴスペルバンドはあるが、このような教会の外で、しかもライブハウスでライブを行うのは、世界を見渡しても、あまり例がないのではないか。しかし、この働きは素晴らしいと思う。今日の昼間、テーマパークに行って娘たちと楽しんできたが、周りの日本人があまり笑っていないのに気が付いた。しかし、このライブ会場で、こんなに日本人が楽しそうに笑うのを初めて見た気がする。人を笑顔にすること、楽しませること、これも牧師の大切な仕事。彼らは素晴らしい牧師たちだ。今日は最高に楽しい夜だった」
この日初めて牧師ROCKSのライブに来たという女性2人に話を聞いた。1人はクリスチャンだが、もう1人はミッション系の学校で12年間過ごしたものの、信仰を持つには至っていない。それでもロックが好きで、牧師ROCKSのライブがあるのをツイッターで知り、クリスチャンである友人を誘って足を運んだとのこと。ライブの後、「みんな、すごくかっこいいですね。MC(演奏の合間の話)も面白いし、今日はとても楽しかったです」と笑顔で話してくれた。
ライブ後、メンバー全員が軽く汗を拭うと、客席に降りてきて観客と交わりの時を持った。サインや写真撮影にも気軽に応じ、短い時間だが悩みを打ち明ける人には、きちんと耳を傾けた。
リーダーでベースボーカルの関野和寛牧師(日本福音ルーテル東京教会)があるクリスチャン女性に「今日もちょっと暴れすぎちゃったかな・・・」と反省の言葉をもらすと、「何を言ってるんですか。私たちはとても楽しんだし、何より関野先生の心は神様がご存じですよ。誰が何と言っても、神様が喜んでくださって、こうやってここに来た人が楽しんでくれれば、それでいいじゃないですか。これからも応援していますよ」と励ました。「信徒に説教される牧師・・・これが牧師ROCKSですね」と関野氏は笑う。
結成当時からのファンだというクリスチャンの井黒かおりさんは、牧師ROCKSの魅力をこう話す。
「牧師というと、どこか『偉大で真面目な人』というイメージ。でも牧師ROCKSは『私たちと一緒』だと、安心させてくれる。一緒に騒ぐし、一緒に踊るし、一緒に楽しんでくれる。彼らの音楽性も魅力。オリジナルの曲も素晴らしい。今日は新曲を2曲も聴かせてくれて、本当に楽しい夜でした」
イエスが一人一人と共におられるように、牧師ROCKSのメンバーも、教会だけでなくライブハウスでも人と共にいる。そう、彼らの最大の魅力は「人と共にいる」ことなのだ。