若者や買い物客で賑わう新宿区大久保駅周辺。韓国レストラン、多国籍料理の店が立ち並ぶ通りを抜けると、ひっそりと佇む教会がある。日本福音ルーテル東京教会(関野和寛主任牧師)だ。
同教会では、毎週水曜日、地域に開かれた場を提供するため、「牧師カフェ」を開催している。
「地域の中に住んでいても、教会はやはり敷居が高い。しかし、教会の方から扉を開けてくれるから、私たちも入りやすいのだと思います」と語るのは、地元商店街の女性。毎週、欠かさずこの場を訪れ、食事をし、楽しい音楽に耳を傾けている。
牧師カフェの始まりは、2011年5月。同教会の信徒で、同カフェ店長の石井満さんを中心に、同教会の3人の牧師、関野牧師、後藤直紀牧師、エリック・ロス牧師によって運営されている。
お昼に行われていた「ヌーンサービス(昼礼拝)」は、もともと、地域の人々や通りがかりの人を取り込む目的で行われていた。しかし、気付いてみると、そこにいるのはいつもと変わらない教会のメンバーばかり。そこで、関野牧師を中心に、カフェ形式にしてみては、といった話になった。現在も、隔週で「ヌーンサービス」を行い、礼拝堂で短い礼拝の後、音楽を聴く時間を持っている。
軽食は、新宿区内にある福祉作業所のパンに決まった。「このパンはとてもおいしいので、水曜日に時間のない方は、パンだけ買いにいらっしゃる方もいますよ。私はそれでもいいと思っています」と石井さんは言う。
米コロラド州出身のロス牧師は、「こうした試みは、日本の、しかも東京という土地ならではですね。アメリカのほとんどの教会は、皆、車で行って、大きな駐車場に車を停めてから入り口に向かうので、『ちょっと寄ってみようかな』といった感じのプログラムは少ないように思います。それは、文化的背景が日本とは違うので、当然といえば当然ですが」と話す。
「既成概念にとらわれない」ことが、このカフェのコンセプトだという石井さん。「教会という概念を取り除いて、来られた方にいきなり『伝道』をしたり、聖書の話をしたりすることなく、とりあえず、教会の中に入ってもらって、音楽を楽しみながら、コーヒーを飲んだり、食事をしたりしてもらえばいいと思うのです」と語る。
音楽ゲストは、石井さんが吟味しつつ、さまざまなジャンルから招いている。取材した12月のカフェには、新宿ゴールデン街で「流し」の歌い手として活躍中の男性がギターの弾き語りを披露した。曲と曲の合間の話では、自身の祖父がクリスチャンであることを明かした。生まれたときには、聖書をプレゼントしてもらい、幼い頃はその聖書を読んだり教会学校に通ったりしたこともあったという。「もう、何十年も聖書を開いていませんが、今日、こうしてここで演奏させていただいたのも、何かの導きかもしれません。今晩から、またお祈りをしてみようかな・・・と思います」と話した。
「牧師カフェ」の名の通り、牧師がカフェの席には常駐している。「通りがかりの方が入って来られて、時折、悩みを打ち明ける方もいらっしゃいます。『私には何もできませんが、お祈りをさせてください』と話して、お祈りさせていただくこともあります。誰かに話を聞いてほしいと思っていらしたのかもしれませんね。『牧師カフェ』ですから、こんな利用の仕方もいいと思いますよ」と後藤牧師は話す。
また、関野牧師は、「牧師ROCKS」のメンバーでもある。教会内にグッズも置いてあることから、関野牧師に会いにカフェを訪れるファンもいるのだという。
1月のカフェの予定は、以下の通り。
11日
カフェライブ
箏(こと):内藤眞代
18日
ヌーンサービス
オルガン:林利恵 リコーダー:高橋明日香
25日
カフェイベント
「ゴスペルで気軽にエクササイズ」
指導:ヨガインストラクター・小坂淑恵
問い合わせは、日本福音ルーテル東京教会(東京都新宿区大久保1‐14‐14、電話:03・3209・5702)まで。