共同作業所「ホサナショップ」(東京都練馬区桜台)に勤めるスタッフによるバンド「ホサナバンド」が22日、現役牧師4人によるロックバンド「牧師ROCKS」と、都内のライブハウスで共演した。
ホサナショップは、主に精神障がいのある人たちが働く作業所だ。季節の果物を使用した無添加のジャムや、オリジナルの焼き肉のたれ、ラー油などを作り、販売している。「ダビデの子にホサナ / 主の名によって来られる方に祝福あれ / いと高き所にホサナ」(マタイ21:9)を理念に掲げ、「主よ、お救いください」という意味の「ホサナ」をショップの名称に入れた。
ライブでは、ホサナバンドが初めに演奏。1980年代の懐かしいポップミュージックをはじめ、オリジナル曲数曲を披露した。バンドのメンバーは、40代から50代の男女5人。中には、プロのミュージシャンを目指して活動中に、突然、心の病に襲われ、その道を断念したメンバーもいた。バンド活動を始めたのは、今から4、5年前。作業所に置いてあったベースギターをメンバーの1人が弾き始め、「バンドをやってみようか」という話に。クリスマスが近かったことから、初ライブは、作業所のクリスマスパーティーになった。「音楽を始めて、何か生活に変化は?」と尋ねると、「明るくなった」「前向きになった」「音楽活動をしているときは、とても楽しい。元気になった気がする」と明るい返事が戻ってきた。
ホサナショップでは、毎朝、賛美と祈りをささげている。また、月に一度は礼拝がある。礼拝では、賛美歌を歌い、近隣教会の牧師がメッセージを担当する。「賛美歌を歌うというのは、分かち合うということ。単純に『いい歌』だと感じるものもあるが、それ以上に温かい気持ちになる」とメンバーは話す。この礼拝のメッセ―ジを時折担当するという、牧師ROCKSの関野和寛牧師は、「私には障がいのある妹がいるので、こうした福祉にも非常に興味があります。ホサナショップを訪れると、月並みな言い方ですが、彼らからたくさんの元気をもらい、学ばせてもらっています。彼らはとても優秀で純粋。うそをついたり、こちらが表面だけ良いことを言ったりしてもすぐにバレてしまいます。だから、こちらも本気で話をしに行きます」と話す。
ホサナショップの所長補佐で、精神保健福祉士の小池文彦さんは、関野牧師が神学生として通ったルーテル学院大学の寮で、共に青春時代を過ごしたという。寮長だった小池さんに、当時の関野牧師の印象を聞いてみると、「正直言って、良い印象がありません。いつも寮の規則を破っては、私を困らせていました。だから、関野牧師と聞いて、本当にこの人が牧師なのかと、今でも半信半疑です」と笑う。小池さんの印象について、関野牧師は「不思議な人。キャパシティーが広いのだと思います。だから、このように作業所を取りまとめることができるのだと思います」と話す。
当時は、よくラーメンを食べながら恋愛相談をしたといい、卒業後もメールなどで連絡を取り合っているという。関野牧師が牧師になってからは、教会に少々対応が難しいと感じる人が来ると、言葉の掛け方や具体的な対応を小池さんに相談することもある。
3年前、初めてホサナバンドと牧師ROCKSが共演。関野牧師は、「彼らの音楽って、何か味があるんです。生き様がそのままロックになったような感じ。彼らも僕たちも同じように格好つけたいのだと思います。格好つけて音楽を奏でて、ステージに立って、楽しみたいのだと思います。ステージに立ったら、牧師も障がい者もない。『みんな、この時を楽しもうぜ!』ということ、それだけ」と話す。
この日、共演した別のバンドを見に来たという女性に話を聞くと、「牧師さんがロックをやるというので、聞いて行こうかなと思って、残っていました。楽しかったです。牧師さんって、もっと年配の方なのかと思ったら、こんなに格好よくて、若い牧師さんもいらっしゃるんですね。いい意味で、牧師のイメージが変わりました。ただ、私たちは信者ではないので、『アーメン』と何度も言うのは、少し抵抗がありました」と話した。
同じく別のバンドの演奏を聞きに来て、今回初めて牧師ROCKSの演奏を聞いたという男性は、「かっこいいですね。牧師さんって、あんなこともやるんですね。びっくりしました」と話した。
牧師ROCKSのライブは、今年は今回で最後だという。来年以降のライブなどの情報はホームページを。