【ロンドン/エルサレム=ENI・CJC】聖公会(英国国教会)の全世界7700万人信徒の霊的最高指導者カンタベリー大主教ローワン・ウィリアムズ氏は6月30日、神学的な正統と称するもののために、世界聖公会共同体内部で新しいネットワークを設立しようとする指導者グループの計画を批判する声明を発表した。
計画は、エルサレムで6月後半に開かれた世界聖公会未来会議(GAFCON=ガフコン)が出したもので、ウィリアムズ氏は「いろいろ問題が多い」と指摘している。
聖公会共同体内部対立の引き金となったのは、2003年に米聖公会が公然同性愛者で離婚経験のあるV・ジーン・ロビンソン氏をニューハンプシャー州の主教として叙階したこと。
エルサレムでの会議は、米聖公会の動きに反対する主にアフリカとオーストラリアの指導者が計画したもの。新たな「告白している英国国教会派の交わり」設立は、伝統的聖書的なアングリカニズム(英国国教会主義)に違反する、とGAFCON組織者が見なす問題を回避するためのもの、と言う。
ウィリアムズ氏は、「共同体の現体制を捨てれば良いというものではない」として、「有効に機能していないにしても、当面の解決を求めるより改革しようとする挑戦は、一時的には効果があるように見えても、問題を解決するよりは、新たな問題を生み出すことになる」と述べた。
教会を「指導、支援」するための新組織として、アフリカと南アメリカの指導者が新しい『首座主教評議会』を設立するというエルサレム会議の決定に、ウィリアムズ氏は「どんな権威で、首座主教は新評議会の新メンバーを受け入れるか否か判断するのか」として「共同体の首座の中から自選した集団でのみ構成される『首座主教評議会』は共同体全体の中で正統性に関するテストに合格しないだろう」と言う。
エルサレム会議は、聖公会共同体との完全離脱を発表するまでには至らなかった。南半球首座のグレッグ・ベナブルス大主教などGAFCON指導者の中には、今年のランベス会議への出席を確認した人もいる。ランベス会議は、カンタベリー大主教の招きにより10年に一度7月に英国で開催されるもの。
ただエルサレム会議に参加した291人の主教の多くは、米国教会指導者が出席することを理由に、ランベス会議をボイコットすると言う。同会議には、ロビンソン主教自身は招待されていない。
ウガンダ聖公会のヘンリー・オロンビ大主教は、米国の問題を取り上げることになるのだから、ウィリアムス氏が米国の主教をランベス会議に招くべきではなかった、とENI通信に語った。
「彼は一家の父のようなものだ。子どもが悪いことをしているのに、何もしなかったら、家族は何と言うだろうか」と、オロンビ氏は、ウィリアムス氏を「個人的な友人」としながらも、カンタベリー大主教として何らかの明確な、ただ痛みを伴う決断をしなければならないと語った。「彼は信心深く、素晴らしく、謙虚な人だ。だれも傷つけたくないのだ」と言う。
ウィリアムス氏が教皇と異なり「同格の中の第一人者」だとして、オロンビ氏は、カンタベリー大主教に自動的に従う義務は他の教会にないと言う。
エルサレム会議の組織者は、「英国国教会派であるか否かに関し、カンタベリー大主教が唯一の判断者でないという『植民地時代後』の現実の中に、英国国教会派の動きの多くがあることを」宣言が示している、と述べた。しかしウイリアムス氏は、「『植民地主義』という言葉は乱用されている。だれ一人植民地の遺産へ無頓着に立ち返るものはいない。しかし、植民地主義の遺産から出て来るものは、単なる権力の反転ではなく、新しい平等な協力なのだ」と、声明で指摘している。