今月6日、米軍がシリアの空軍基地をミサイル攻撃したことを受け、「平和をつくり出す宗教者ネット」主催による緊急集会が11日、衆議院議員会館(東京都千代田区)で開かれた。
4日、シリア北西部にあるイドリブ県で反政府勢力への攻撃に化学兵器が使用されたとして、ドナルド・トランプ米大統領はこれをシリア政府軍によるものと断定し、59発の巡航ミサイルがシリア本土に向けて発射された。この武力行使を支持する世論もある一方で、化学兵器使用やミサイル攻撃への非難の声が世界各地で上がった。
同集会には、キリスト教界、仏教界、イスラム教界の宗教者をはじめ、その信徒や一般市民も参加し、荒天の中だったが、約80人が集まった。
冒頭、「平和をつくり出す宗教者ネット」世話人の1人、日本山妙法寺僧侶の武田孝雄氏が次のようにあいさつした。
「化学兵器の攻撃によって多くのシリアの人々が苦しんでいる。さらにトランプ政権によるミサイル攻撃によって、中東における軍事的緊張が高まった。これ以上、シリアの人々が犠牲になって苦しむことがあってはならない。2年前の後藤健二さん、湯川遥菜さんの拘束殺害事件の際に、どれだけ多くのシリア人が彼らの解放のために奔走してくれたかを思い出してほしい。私たちは今日の行動を第一歩として、シリアの人たちのためにさらに祈りと行動を共にしていきたい」
各宗教界からのあいさつを前に、おのおののやり方で1分間の祈りをささげた。
会場を訪れた参議院議員の福島瑞穂氏は次のように話した。
「トランプ米大統領がシリアに59発のミサイルを撃ち込んだと聞いて、戦慄(せんりつ)を感じた。『もっと声を上げなければならない』『何か集会をやらなければならない』と思っていた矢先、このように宗教者の方々を中心にいち早く集会を開いてくださったことに感謝している。安保理決議を通すことなく、また米国にとって自衛のためでもないこのミサイル攻撃でさらなる国際情勢の混乱を招き、シリア市民を傷つける結果になっている。日本政府は、米軍のミサイル攻撃に対していち早く『理解』を示したが、日本にとって武力行使をしないことこそ、最大のテロ対策なのでは」
日本イスラーム文化センターからは、クレイシ・ハルーン・アフマド事務局長が来場。クレイシ氏は1995年にパキスタンから留学生として来日した。同センターでは、米国同時多発テロ以降、アフガン難民の支援を行ってきたが、近年、シリア難民への支援も開始した。主に教育や医療、そして200人の孤児の支援を行っている。クレイシ氏は言う。
「シリア人の友人は皆、早く独裁政権が終わってほしいと望んでいる。その終わり方は、米国が原因でも大地震が原因でも何でもいい。しかし、今回の米国による攻撃は許せない。シリアに早く平和が訪れるようにと願っている。日本は広島、長崎の経験がある。化学兵器がどれだけ恐ろしいか知っている日本人は、力ある国に従うだけでなく、平和のためのリーダーシップをとってもらいたい」
キリスト教関係者からは、「平和を実現するキリスト者ネット」事務局の鈴木玲子氏があいさつに立った。鈴木氏は6歳の時に東京大空襲に遭った。当時、本郷にある教会の牧師をしていた父親を含む家族全員が死ぬ覚悟をしたが、奇跡的に皆、難を逃れた。しかし、3年前まで住んでいた亀有の教会は空襲により焼失し、兵隊に行った1人、学徒動員された中学生1人、小岩に住んでいた一家以外、そこの教会員全員が焼死した。鈴木氏は言う。
「私はシリア内戦の死傷者数を見ると、亀有の教会でよく遊んでいたレイジちゃんという男の子のことをいつも思い出す。甘えん坊で泣き虫だったレイジちゃんが、大空襲の猛火にのまれ、どんな思いで死んでいったのか・・・。今の報道を見ていると、国と国の関係ばかり。それも大切だが、その中にいるのは、いつも普通の生活を送るレイジちゃんのような一人一人だ。イエスさまはご自分が捕らえられるとき、弟子がイエスさまを守ろうとして剣を取ると、『剣をさやに納めなさい。剣を取る者は皆、剣で滅びる』と言われた(マタイ26:52)。私たちは『戦争はしない』『武力を行使することは絶対にしない』という気持ちを持って、これからも声を上げていく」
集会の最後に、「シリアに平和を!世界に平和を!人々をこれ以上苦しめないでください!」と参加者全員で声を上げた。