エジプト中部ミニヤ県の一部のコプト正教会は、9日に北部のタンタとアレクサンドリアにある2つのコプト正教会が過激派組織「イスラム国」(IS)により相次いで爆破された事件を受け、16日に予定されていた復活祭の式典を縮小または取りやめにすると発表した。爆破事件では少なくとも45人が犠牲となった。
ミニヤ県はコプト正教徒が多く住む地域として知られており、英オンライン新聞「インディペンデント」(英語)によると、コプト正教会のミニヤ教区は、復活祭の式典を祝賀色のない典礼の祈りのみに限定すると発表した。
エジプト政府は、聖枝祭を狙ったこの自爆テロ事件を受け、3カ月間の非常事態を宣言。同事件ではISが犯行声明を出している。
イスラム教が多数派のエジプトでは、キリスト教の一派であるコプト正教会は少数派。長年にわたり、イスラム過激派の標的とされている。カトリック教会のローマ教皇フランシスコは、コプト正教会との連帯を呼び掛け、予定していた今月28、29日の首都カイロ訪問は変更しない考えだ。
カトリック系のCNA通信(英語)によると、バチカンのグレッグ・バーク報道官は、教皇のエジプト訪問は予定通り行われると記者団に語った。
フランシスコ会のマルコ・タスカ神父も、教皇は「エジプト訪問を堅持しておられる」と語り、教皇は同国の状況について「詳細な報告を受けている」と述べた。
教皇の訪問には、カトリック・イスラム間の対話を促進する意図もあり、人口の1割に過ぎないエジプトのキリスト教徒に対する、暴力の流れに歯止めを掛ける狙いがある。
エジプト司教協議会の広報担当者であるラフィック・グリーチェ神父も、教皇の訪問はエジプトの教会に安心感をもたらすとの認識を示した。
同じくカトリック系のCNS通信(英語)によると、グリーチェ氏は「教皇の使命は苦難の時に兄弟たちのそばにいることです。今こそエジプト国民全体と東部のキリスト教徒に、平和と希望をもたらす時です」と語った。
復活祭の式典縮小などが報じられ、金属探知機などで安全対策が取られる中にあっても、エジプトのキリスト教徒たちは教会に行くことをやめていない、とグリーチェ氏は言う。「教会出席は普段通りにはいきません。安全確保の措置は必要ですから」。しかし、自爆テロ後も2千人でミサをささげたという。
「信徒たちはすでにタンタのテロ事件について知っていましたが、彼らは恐れをなして尻込みしたくなかったのです。夕方には聖週間の祈りをささげに来た人たちもいました」
キリスト教抑圧監視団体「米国オープン・ドアーズ」のデイビッド・カリー会長兼最高責任者(CEO)はクリスチャンポストに、痛みと衝撃の中にあってもコプト正教徒の信仰は強く保たれていると語った。
「信仰の故にコプト正教徒たちは非常に強い圧迫を受けていますが、窮地に置かれても彼らは固く立っており、主イエスへの愛を真に表明しています」とカリー氏。コプト正教徒たちは「受難週間と復活祭を祝い、主イエスに従う決意を持っている」と語った。
カリー氏は、暴力に直面することにより、コプト正教徒たちはイエス・キリストがどのような存在であるかを再発見していると言う。「このような悲劇の中で唯一信仰の支えとなるものは、究極的には主イエスから来る霊的な力だけですから」