エジプト北部の都市タンタとアレクサンドリアにあるコプト正教会の2つの教会で9日、相次いで爆発があり、少なくとも47人が死亡、130人以上が負傷した。このうちアレクサンドリアの教会では、コプト正教会のトップであるコプト教皇タワドロス2世も礼拝に参加していたが、無事だったという。この日は、イースター(復活祭)直前の日曜日であるパームサンデー(聖枝祭)で、多くの信徒が礼拝に参加していた。事件後には、過激派組織「イスラム国」(IS)が系列メディアを通して犯行声明を発表した。
爆発があったのは、タンタにある聖ジョージ教会と、アレクサンドリアにある聖マルコ大聖堂。政府系アハラム紙などの情報として朝日新聞が伝えたところによると、まず聖ジョージ教会で午前10時ごろ、礼拝中に爆発があった。そして、午後1時ごろに聖マルコ大聖堂の前で爆発があった。聖ジョージ教会では、犯人が教会内部で自爆したとみられており、聖マルコ大聖堂では、内部に押し入ろうとした人物を警察官が取り押さえようとしたところ、自爆したという。
犠牲者の数はメディアによってばらつきがあるが、時事通信がアハラム紙の情報として伝えたところによると、聖ジョージ教会で29人、聖マルコ大聖堂で18人の少なくとも計47が死亡、計130人以上が負傷した。
事件を受け、日本唯一のコプト正教会である聖母マリア・聖マルコ・コプト正教会(京都府木津川市)を担任するコプト正教会シドニー教区のダニエル司教は9日、フェイスブック(英語)にコメントを掲載。「われわれは、タンタの聖ジョージ教会とアレキサンドリアの聖マルコ大聖堂で今日、失われた罪なき多くの命のために涙しますが、天の父はこれらの命を大きな喜びをもって永遠へと受け入れてくださったのです。われわれは教会に行き続け、主に祈ります。あらゆる悪なる行為によってもおびえ逃げることはありません。主がわれわれをあらゆる悪から守り、保護してくださいます」などと語った。
ダニエル司教は爆発テロを非難する一方、「これらのテロリストが、全ての人々に対し平和の心を持ち、神がわれわれ全てを愛されたように、互いを愛をもって取り扱えるように祈ります」ともコメント。エジプト政府に対しては、警備体制を強化するよう要望した。
コプト正教会が加盟する世界教会協議会(WCC)は、今回のテロ攻撃を非難するとともに、こうした暴力の終わりを求める声明(英語)を発表。WCCのオラフ・フィクセ・トヴェイト総幹事は、「この残忍な行為を前に、人類、また全ての信仰の人、そしてあらゆる善意ある人は、互いを守り、このような暴力を防ぐために、互いを尊敬し、助け合うことに対し、再びコミットするよう共に立ち上がらなければなりません」とコメント。エジプトのアブデルファタハ・アル・シシ大統領や現地の宗教指導者らに、「迅速かつ大胆に、あらゆる宗教の礼拝者たちの基本的な信教の自由を保護し、暴力に対して安全を確かなものとし、全ての人々のために正義を保障する」ことを要求した。
インターネット上には、現場の様子を映したとみられる動画や写真が投稿されており、爆発で大破した長いすや黒く焦げた遺体などが確認できる。ダニエル司教もフェイスブックに、血に染まったパームサンデー用の枝の写真を投稿。シシ大統領は9日、3カ月間の緊急事態宣言を発表した。