世界的な建築家・安藤忠雄氏の半世紀に及ぶ挑戦の軌跡と未来への展望に迫る展覧会「安藤忠雄展―挑戦― TADAO ANDO:ENDEAVOURS」(主催:国立新美術館、TBS、朝日新聞社)が、9月27日から六本木にある国立新美術館で開催される。これに先立ち、記者発表会が12日、同美術館講堂で開催された。特別レクチャーでは、安藤氏自らが登壇し、これまでの活動の軌跡を振り返りつつ、展覧会の見どころを紹介した。
国立新美術館開館10周年として企画された同展の最大の見どころは、安藤氏の代表作「光の教会」(日本基督教団茨木春日丘教会礼拝堂)を原寸大で野外展示場に再現することだ。打ちっ放しのコンクリートの礼拝堂に十字架状のスリット窓が壁面いっぱいに設置され、そこから差し込む光によって礼拝空間が生み出される設計の光の教会は、安藤氏の作品の中で最も知られている。
今回、実物同様に再現されることには、「建築は体験すること」という安藤氏の考えが反映されている。宗教施設であるため一般の人が見学しづらい光の教会を、誰でも気兼ねなく体験して、その質感や重量感を実際に知ってもらいたいと話す。また再現するにあたっては、十字架にはめ込まれているガラスは取り外される予定だ。安藤氏は、光と同時に風も入ってくることで、互いが助け合いながら生きなければならないことも実感できるので、ガラスは外したいと常々考えてきたことを明かした。
同展は、安藤氏の半世紀に及ぶキャリアの集大成ともいえる。展示場には、これまで手掛けてきた模型やスケッチ、ドローイングなど、総計200点余りが並ぶ。中央には、30年余りに及ぶ「直島プロジェクト」の活動を空間インスタレーションで紹介し、安藤氏の原点である住吉の長屋をはじめ100を超える住宅作品のハイライトも一挙公開される予定だ。安藤氏は「ただ展示するのではなく、今までのものを通して未来を考えたいと思っている」と話す。
同展の企画にあたっては、「近頃の日本人はおとなしく常識的な人が多い中、自由と勇気を持って新しい世界を切り開いてほしい。そういう意味も込めて『挑戦』とした」と語った。安藤氏の建築家への出発は、建築の専門教育を受けられないという絶望からスタートしている。また、数年前にがんを患い、再発も発見された。安藤氏は、「絶望の淵に立たされても、そこで立ち止まるのではなく、勇気を持って挑戦する。絶望の中でも目標だけは持ち続け、社会に何ができるかを考えると元気が出てくる」と明かした。
「人が集まる場所を造るのが建築」と述べ、「建築によって歴史、現在、未来を考える」と話す安藤氏は、最後に今後の目標として、東北の民家を使って子どもの図書館を造りたいと強い思いを語った。
同館の青木保館長は、昨年開催したファッションデザイナーの三宅一生氏の仕事を紹介した展覧会「MIYAKE ISSEY展:三宅一生の仕事」が好評であったことを伝え、これからもジャンルにとらわれない、日本を代表する文化、創造者の展覧会を開催していきたいと話した。また、同展については、すでに海外からも多くの問い合わせが来ており、同館の企画展として海外での巡回展も展開していきたいと意欲を見せた。
安藤忠雄展―挑戦― TADAO ANDO:ENDEAVOURS
会期:2017年 9月27日(水)〜12月18日(月)
開館時間:午前10時~午後6時(金曜日・土曜日は午後8時まで)※入場は閉館30分前まで
休館日:毎週火曜日
会場:国立新美術館企画展示室1E、野外展示場(東京都港区六本木7ー22ー2)
公式ページ:http://www.tadao-ando.com/exhibition2017