庭野平和財団(理事長:庭野浩士・立正佼成会学林学長)は20日、第34回庭野平和賞に、ルーテル世界連盟(LWF)議長でヨルダ聖地福音ルーテル教会(ELCJHL)監督のムニブ・A・ユナン氏(66)を選んだと発表した。
庭野平和賞は、宗教的精神に基づいて宗教協力を促進し、世界平和の推進に顕著な功績をあげた個人または団体に贈られる。これまでもキリスト者の受賞者として、第1回のカマラ大司教、第22回のハンス・キュング氏(カトリック神学者)らがいる。
ユナン氏は、1948年のイスラエル建国によって故郷を追われたパレスチナ難民の子として、50年にエルサレムで生まれた。クリスチャンの家庭だったが、ムスリムと同じコミュニティーの中で仲良く暮らしたという。
2010年からルーテル世界連盟の議長を務め、昨年10月31日の宗教改革記念日、ルーテル教会とカトリック教会の和解と一致に向け、教皇フランシスコと共に「1つの聖卓で聖餐を受けることを心から願う」という文言も含んだ共同声明を発表したことは記憶に新しい(現在は聖体拝領ができるのはカトリック信徒に限られている)。ちょうど500年前、ルターの宗教改革によって袂を分かち、争い合った過去を反省するとともに、今後、諸問題を解決していくための協力を表明したのだ。
このようにキリスト教界内の一致(エキュメニカル)に取り組むとともに、2002年、ユダヤ教、ムスリム、キリスト教の指導者による「中東宗教指導者会議」で武力衝突の早期終結を求める「アレクサンドリア宣言」の採択に関わった他、05年には3宗教の指導者と協力し、エルサレムで「聖地宗教評議会」(CRIHL)を設立した。
庭野平和財団はユナン氏について、「首尾一貫して優しさと思いやりの心で周りを明るく照らし続けている。相手に自分の心を打ち明けることを必要とする対話の働きによって、相違の峡谷に橋を架け、ムスリムとユダヤ教徒とキリスト教徒の隔たりを着実に小さくすることが可能であることを、師は示してきた」とたたえた。
受賞にあたってユナン氏は、「もしも諸宗教間の関係を強くすれば、地球上の全ての共同体に影響を与えている課題に対して、私たちは力を合わせて取り組むことができる」とメッセージを寄せた。
贈呈式は7月27日、東京都港区の国際文化会館で行われる。