「まことに主は渇いたたましいを満ち足らせ、飢えたたましいを良いもので満たされた」(詩篇107:9)
「健全なる精神は健全なる肉体に宿る」と言いますが、もともとは、ローマの賢人ユヴェナリス(50~130年)の祈りからきたものです。その祈りとは「健全なる肉体に健全なる精神を宿らせたまえ」です。
人は、肉体だけを鍛えたところで、健全な精神がついてくるわけではありません。「肝心なことは、肉体の健康よりも健全な精神、健やかな魂を持つことである」というのが本来の意味なのです。
日野原重明医師は「健康とは、たとえ病気を持っていても、上手に生きている姿である」と言います。つまり、病気を持っていても、健全な魂を持つ人は健康であるということでしょう。
日野原先生は「今は老眼鏡をかければ見えるし、白内障の手術をすれば見える。糖尿病でも、高血圧でも、心臓病でも、薬を飲んだり、インシュリン注射をすることで、病気があっても普通の生活ができる。今まで健康というのは病気がないことであると、あまりに言い過ぎた。人間は病むものなのだ。もともと欠陥も持っている。そういう気持ちで健康に対する考えを変えると、爽やかな気持ちで生きられる」と言います。
2000年の秋、日野原先生は75歳以上の方々を対象にした新老人の会を結成しました。新老人の会のスローガンは3つあります。
1. 愛し、愛されること、2. 創(はじ)めること、3. 耐えること。これらのスローガンは、聖書の教えることと合致しており、これを実行することで健全な魂を養うことができるのです。
1. 愛し、愛されること
「愛は結びの帯として完全なものです」(コロサイ3:14)
人はいくつになっても愛し、愛される関係が必要です。夫婦の愛、親子の愛、先生や友達との愛を大切にし、自分から積極的に愛の関係を作り、それを育むように努力するのです。
その時、その人の魂は健全なものへと成長していくのです。
2. 創(はじ)めること
「私たちは神の作品であって、良い行いをするためにキリスト・イエスにあって造られたのです」(エペソ2:10)
創めるとは、今までにしたことのないことに勇気を持って挑戦することです。絵を描いたり、歌を作ったり、合唱団に入って歌ってみたり、新しいスポーツにチャレンジしてみたりするのです。
その時、今まで知らなかった新しい世界が広がり、新しく人間関係が広がっていくのです。自分の隠れた才能や能力を発見することは大きな喜びです。何歳になっても新しいことを創めるのに遅すぎることはありません。
今日という時は自分の人生の残りの日々の中で、一番若い時なのです。
「老人よ、大志を抱け!」
3. 耐えること
「私の兄弟たち。さまざまな試練に会うときは、それをこの上もない喜びと思いなさい。信仰がためされると忍耐が生じるということを、あなたがたは知っているからです。その忍耐を完全に働かせなさい。そうすれば、あなたがたは、何一つ欠けたところのない、成長を遂げた、完全な者となります」(ヤコブ1:2~4)
私たちの人生には、実にさまざまな困難が襲ってきます。愛する人の死、経済的破綻、突然の事故や病気。しかし、そのような時に、神を呪ったり、人を恨んだりしないで事実をしっかりと受け止め、耐え忍ぶ中で、人の品性が磨かれていくのです。
そして、人の痛みの分かる感受性の豊かな人に変えられていくのです。
こうして、健全な魂が人の中に形作られていくのです。
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